2010 Fiscal Year Annual Research Report
古典期におけるマケドニア人のエスニック・アイデンティティに関する研究
Project/Area Number |
22520743
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
澤田 典子 静岡大学, 人文学部, 准教授 (50311650)
|
Keywords | マケドニア / ギリシア / アテナイ / エスニック・アイデンティティ / バルバロイ |
Research Abstract |
今年度は、古典期のマケドニア人のエスニック・アイデンティティのあり方を考察することによってマケドニア王国の興隆の背景に迫るという研究目的のため、まずは、ギリシア人のバルバロイ観の変容、および前5~4世紀のマケドニアとアテナイの関係について検剖するという課題に取り組んだ。主要な史料となる同時代の歴史叙述や悲劇作品を分析してギリシア人のバルバロイ観とギリシア人としてのアイデンティティの変遷について考察し、古典期におけるバルバロイ観は決して固定的なものではなく、ギリシア人たる指標も時代とともに変化したことを明らかにした。また、前5世紀初頭のアレクサンドロス1世の治世から前4世紀半ばに至るまで、マケドニアとアテナイの関係はマケドニアの木材の交易を軸とした緊密なものであったことを、古典史料・碑文史料に即して検証した。さらに、ヘロドトス・トゥキュディデス・トラシュマコス・イソクラテス・デモステネスなどの同時代の著作家たちの記述をもとにマケドニア人とギリシア人の相互認識について分析するため、こうした著作家たちの立場や価値観をその時代の文脈のなかで検討するという作業も開始した。こうした作業をもとに、文献学的な先行研究を踏まえつつマケドニア人とギリシア人の相互認識のあり方について考察したうえで、そうした相互認職がその後のマケドニアとギリシア世界の関係史においてどのように作用したのかを解明していくことが、今後の課題となる
|