2010 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ現代史における亡命社会主義者とカトリック―「1945年の断絶」の克服
Project/Area Number |
22520746
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
安野 正明 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 教授 (80202365)
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Keywords | ドイツ現代史 / 亡命 / カトリック / 社会主義 |
Research Abstract |
日本のドイツ現代史研究には1945年の前と後がつながらない「1945年の断絶」がある。つまり、第二次世界大戦の終結=第三帝国の崩壊で研究が区切られてしまうことが一般的で、その結果「1945年の連続・非連続」を考察したドイツ現代史研究はわが国では立ち後れている。本研究は亡命社会主義者とカトリックの思想と行動、その変化を跡づけることにより、ドイツ現代史研究における「1945年の断絶」を克服した「20世紀ドイツ史」への展望を開くことを目的とする。亡命社会主義者とカトリックを取り上げる理由は、研究を積み重ねているドイツ社会民主党史(SPD)との関連で言えば、多くの亡命者帰国者が戦後SPDで重要な役割を果たしたからであり、カトリックは「1945年の断絶」なくドイツ社会に影響力を持ち続けた稀有な存在だったからである。 4年かけて遂行する本研究課題の初年度である平成22年度は、亡命帰国者とカトリックの両分野にわたって必要な文献の入手に力を注いだが、1969年に戦後SPD初の首相になるヴィリ・ブラントを中心としたSPD亡命帰国者の戦前と戦後の変化を重点的に研究した。そのため刊行されている文献だけでなく、ボンの社会民主党文書館(das Archiv der sozialen Demokratie)に所蔵されているブラント関係文書の分析に取り組んだ。現時点で発表できた論文は戦後期にとどまっているが、平成22年度の研究によって1933年にノルウェーに亡命したブラントがどのような人々と出会い、いかなる影響を受けたか、左翼過激派であったブラントが亡命時代にどのような曲折を経て穏健な民主的社会主義者になったかを解明するに足る史料を入手できたので、その原稿化を進めている。
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