2011 Fiscal Year Annual Research Report
日ソ国交樹立後の東北アジアにおける日ソ関係の研究(1925-1931)
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22520758
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Research Institution | Osaka University of Economics and Law |
Principal Investigator |
藤本 和貴夫 大阪経済法科大学, 教養部, 学長 (70029734)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
華 立 大阪経済法科大学, 教養部, 教授 (20258081)
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Keywords | 東北アジア / 日ソ利権問題 / 日ソ漁業権問題 / 日ソ関係 / 後藤新平 / スターリン / 中東鉄道 / 中ソ関係 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日ソ基本条約の締結(1925年1月)から1930年代初めまで(ほぼ1920年代後半)の日ソ関係が比較的安定していた理由を、東北アシアにおける国際関係に注目することで明らかにすることにある。 1.1920年代後半の日本の対ソ政策とソ連の対日政策を、公刊・非公刊の両国外交文書で比較した。20年代後半の日ソ交渉で最大の対立点はシベリアにおける日本の利権問題とソ連太平洋沿岸での日本の漁業権の問題であった。特に漁業における既得権を求める日本に対しソ連は競争入札を譲らなかった点が大きい。最後は、1928年の後藤新平の訪ソによるスターリンとの直接交渉によって、スターリンの方が大きく譲歩した。それには外務人民委員チチェーリンや同代理カラハンらの役割が大きい。 2.後藤の対ソ方針は、1927年4月に成立した田中義一内閣の方針と対立するものではなくなっていた。田中首相が、日ソの地理的・経済的関係から親善関係の持続を明確に「対ソ基本方針」としたからである。 3.モスクワでの日ソ交渉と並行して、経済関係で実務にたずさわるソ連の極東国民経済会議の経済視察団や極東学術調査団の代表が来日し、日本とソ連極東地域との間で太い人脈つくりが始められた。両国政府が財政的にもこれに力を入れていたことも明らかになった点は重要である。 4.日ソ両国は、両国が歴史的に対立してきた「満州問題」を主要な交渉の課題として取り上げることはなかったが、中国による中東鉄道の帰属・管理要求には注目していた。この問題をめぐって、1929年8月に中ソ国境地帯で起こった中ソの軍事衝突が、東北アジアの国際関係を不安定にする第一歩となったといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ソ連の対日政策について、新しい外交史料から外務人民委員チチェーリンや同代理カラハンと後藤新平との会談や彼らのスターリンへの報告書などから分析が進んだ。中東鉄道の帰属・管理問題に対する中ソ関係について、当時の在ハルビン日本諸機関が多くの調査報告書を残しており、その分析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
20年代後半の日ソ関係にとって、日本とソ連が中国国内の政争、特に奉天政府と南京政府の対立やその動向をどのように分析していたか重要であることがわかった。今年度のハルビンでの調査と末次資料の照合により張学良と中東鉄道事件についても追及したい。
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Research Products
(3 results)