2010 Fiscal Year Annual Research Report
刃部研ぎ分け紋様を有する武器形青銅器の施紋研磨技術と系統解明のための実験的研究
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22520767
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
村田 裕一 山口大学, 人文学部, 准教授 (70263746)
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Keywords | 考古学 / 青銅器 / 施紋研磨技術 |
Research Abstract |
本年度は研究の開始年度にあたるので,施紋研磨痕の調査に重点を置いた。主に出土例の多い島根県荒神谷遺跡出土銅矛および佐賀県検見谷遺跡出土銅矛について調査を実施し,研磨痕データの蓄積に務めた。以下に調査成果の概略を述べる。 研磨痕の精粗には変位幅が見られ,相対的に粗・中・細・極細の4種類程度に分類できることが分かった。また,研磨痕の粗密のパターンにも特徴が見られ,粗密が均一で整っているもの,不規則なもの,細かい研磨痕の中に粗い研磨痕が規則的に見られるものなど,大まかに3つの特徴が抽出できた。これらは,研磨物の特徴を反映するもので研磨物特定の重要な手がかりとなる。さらに,研磨痕に単位を把握できる事例が見られた。ここからは研磨物の大きさの復元,研磨作業単位の推定が可能になると考えられる。 施紋手順の多様性も明らかとなった。基本的には地紋研磨の後に斜紋研磨が施されるが,地紋と斜紋が交互に施されるような特殊例もある。また,初めに紋様が完成して以後も,銅矛の保守や清掃のための研磨や,紋様の再施紋といった様々な来歴を考慮することが必要であることが分かった。 また,鎬を挟んで左右の斜紋がどのように配置されているのかについて,その接し方のパターンを観察することで,施紋研磨を開始する前の,研ぎ分け紋様の割り付けにあたっても高度の規格性と厳密性の下に計画されたことが推定された。 このように一口に研ぎ分け研磨痕といっても,様々な要素が絡み合うことが研磨痕の観察によって明らかとなった。 また本年度には,研磨痕の調査に並行して,関連文献資料の整理・収集を行い一覧表を作成した。
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