2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22520769
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮本 一夫 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (60174207)
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Keywords | 上馬石貝塚 / 日本学術振興会 / 土器製作技法 / 弥生開始期 / 遼東半島 / 無文土器 / 小珠山貝塚 / 広鹿島 |
Research Abstract |
日本学術振興会が1941年に調査した遼東半島上馬石貝塚は、A~D地点に別れて調査されている。この内、昨年度はA・C・D地点の土器・石器の実測をほぼ終了することができたが、本年度はB・BII地点と昨年度未実測であったA地点資料や表面採集資料の土器・石器・骨角器の実測を完了することができた。さらに、土器に限っては図版の作図とトレース作業を行い、ほぼすべての出土土器挿図を完成することができた。これで発掘報告書作成にあたっての基本的作業の大部分を終えることができ、研究遂行への目処を得ることができた。また、各地点や地点ごとの層位資料を比較することにより、おおよその土器編年の考え方をまとめることができた。さらにそうした土器編年に基づいて土器の調整や成形などの製作技法に着目すると、時期的な変化に対応して製作技法の変化が読み取れた。こうした製作技法の変化は、朝鮮半島の新石器時代から無文土器時代の製作技法の変化にほぼ対応することが判明し、さらには日本の弥生文化開始期の土器製作技術の画期に連動するものとして、興味深い事実をつかむことができた。 また、昨年の現地調査に加え、さらに近隣の島である広鹿島での遺跡踏査を行い、特に上馬石上層に相当する時期の遺跡や遺物の現地調査を行った。これはこの時期の比較資料が少ないため、補完資料を求めてのものであったが、中国社会科学院考古研究所が近年発掘した資料などを実見し、上馬石貝塚の分析結果の妥当性を検証した。また、上馬石貝塚の貝類など自然遺物は発掘調査後に持ち帰られていなかったため、自然遺物の調査検討はできない状態にある。そこで、広鹿島内にある小珠山貝塚の発掘資料である貝類のサンプルを入手し、岡山理科大学の富岡直人氏に分析を依頼した。 さらに、弥生時代後半期の年代論や対外交流史の問題解決のため、壱岐カラカミ遺跡の鉄器関係資料の分析や炭素C14年代分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたのは、本年度までの研究過程で上馬石貝塚の土器・石器・骨角器などの実測を終了するところまでであったが、さらに土器挿図の図版を組み上げられたとともに、そのトレース図を完成することができたことにある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は土器、石器、骨角器や自然遺物などの分析結果をまとめ、そのための作図や文章化する作業が必要である。また、こうした分析結果が遼東、朝鮮半島、北部九州の先史時代編年においてどのような位置づけが可能であるかの検討を行う必用がある。
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