2011 Fiscal Year Annual Research Report
古病理学的所見から考察する弥生時代の社会・生活様相について
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22520775
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
谷畑 美帆 明治大学, 研究知財戦略機構, 研究員 (10440174)
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Keywords | 弥生時代 / 古病理学的所見 / ストレス・マーカー / クリブラ・オルビタリア |
Research Abstract |
本年度においては、震災の影響等から十分な調査が実施できなかった状況にある。学術論文については次年度に発表する予定である。以下、本年度における調査概要を記述する。 本年度は、弥生時代中期に相当する人骨資料を中心に古病理学的所見を観察する基礎固めを実施した。実際に観察した人骨資料は、北部九州を中心とするものであり、九州大学総合研究博物館や福岡県内の博物館に収蔵されている人骨資料における所見の観察を行った。この他、北部九州の弥生時代人骨に影響を与えていると考えられる韓国南部の様相を探るため、釜山大学に保管されている人骨資料の資料調査を開始した。今年度の調査は、短期間ではあったため、保管されている人骨資料の遺存状態の確認、及び来年度の調査に関する基礎調査を実施した。 この他、本年度においては、比較的遺存状態の良好な遺跡(西日本に位置する弥生時代前期~中期に相当するもの)に関する基礎データを収集するため、各地の図書館にて発掘調査報告書の複写作業を実施した。これらのデータを基に次年度以降、学術論文・学会発表を実施する予定である。 さらに、本年度では、北部九州における弥生中期に相当する人骨資料にみられる古病理学的所見に関する調査を実施し、以下のような結果を得ている。 すなわち、弥生時代中期に相当する人骨資料においては、農耕の開始に伴う明確な古病理学的所見の痕跡を見て取ることはできなかった。例えば、ストレス・マーカーの一つであるクリブラ・オルビタリアの所見は、縄文時代に比してやや高くなっているが、その所見は未成人骨を中心としたものであり、成人個体において本所見の出現頻度が高くなるとはいいがたい状況にある。この他、後期の遺構から出土した人骨資料の食性分析を実施した結果、雑穀メインの食性を示唆する数値が得られており、弥生時代になったからといって米食の様相がどの集団でもみてとれるわけではないという結果も得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
震災の影響により、半年ほど、実際の人骨資料を観察できない状況にあった。そのため、研究費を調査より書籍など文献資料の複写に費やすことが中心となり、本年度は次年度に対する準備期間となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度においては、日本各地の博物館に収蔵されている遺存状態の良好な人骨資料に見られる古病理学的所見に関する調査を可能な限り実施し、学術論文などとして提示できる業績として示していく。また、震災等の影響により、査読が遅れている論文の発表も実施できる状況にある。
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Research Products
(2 results)