2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520777
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
矢野 健一 立命館大学, 文学部, 教授 (10351313)
|
Keywords | 水田 / 縄文 / 弥生 / 遺跡立地 / 稲作 |
Research Abstract |
本研究の目的は、縄文時代晩期から弥生時代前期にかけて、水田稲作がどのように普及したかについて、遺跡立地の推移を広域的、微地形的に検討し、石器組成の変化と併せて検討することにより、漸移的、段階的普及の実態を北部九州、近畿地方の比較を通じて、明らかにする。近畿地方の既存の土器編年には問題があるため、正統的な編年手法に基づき、一系的な編年に改編し、新たな編年に沿って分析する、というものである。平成23年度の成果は、次のとおりである。 (1)近畿地方の縄文晩期の遺跡集成については、京都盆地、阪神間(神戸市域含む)、大阪平野、奈良盆地、和歌山県、においてほぼ終了した。弥生前期の遺跡について、補足を要する部分がある。 (2)近畿地方の遺跡の立地を地図に記入していく作業については、2万5千分の1の地形図(一部については同縮尺の土地条件図)に遺跡範囲を落としていく作業を進めており、現在、京都盆地、阪神間に関してほぼ終了した。 (3)既存の土器編年の検討には、各地域の比較検討を必要とする、と判断しているが、京都盆地については、新たな土器編年を構築した。 (4)北部九州地方については、研究協力者の宮地聡一郎(福岡県教育委員会)が研究成果を発表する予定である。 (5)石器組成の変化については、報告書の複写はほぼ終了したが、十分に検討できていない また、特筆すべき成果として、平成24年3月17・18日に立命館大学衣笠キャンパスで、矢野が国際シンポジウム「農耕の起源」を主宰し、矢野も「西日本における水稲耕作導入にいたる過程」と題して研究発表を行った。また、平成23年8・9月に矢野が発掘調査を行った滋賀県米原市杉沢遺跡において、縄文晩期の貯蔵穴を検出し、土壌の水洗選別から回収した炭化種実の同定作業を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺跡立地の分析については、予定通りで、石器組成の分析が遅れている。一方で、国際シンポジウムの開催により、水稲耕作の導入理由に関する理論的検討が進み、滋賀県米原市杉沢遺跡の縄文晩期に炭化植物遺体の分析は新たな知見を提供するはずである。
|
Strategy for Future Research Activity |
遺跡立地と石器組成の分析については、予定通り、進める。滋賀県米原市杉沢遺跡の発掘成果である植物遺体の分析結果は今年度、報告を行うとともに、同遺跡の第二次発掘を行う。国際シンポジウムの成果については、今年度中に日本語版を出版、次年度に英語版を出版予定。
|