2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520779
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
上野 祥史 国立歴史民俗博物館, 研究部, 准教授 (90332121)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 憲司 佛教大学, 文学部, 名誉教授 (90079020)
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Keywords | 考古学 / 東洋史 / 自然地理学 / 秦漢史 / 地域圏 |
Research Abstract |
漢代は古代中国世界の一つの到達点であり、統一を背景とした共通性が強調されることが多い。本研究は、歴史情報と地理情報に基づいて漢代の地域圏を整理して、考古学・文献史学・自然地理学という視点から地域圏を評価することで、漢代社会の構造を明らかにしようとするものである。城郭・墓葬・自然境界を分析の手段として地域圏を析出し、地域圏相互の関係に基づいて、漢という世界の共通性とは何であるのかを問う。 本年度は、華北地域東部の河南・山西・山東・河北・遼寧・内蒙古を中心に漢代地域圏に関する基礎情報の整理を中心に研究を進めた。漢代歴史情報地図の作成にむけて、地理情報と歴史情報の集成や整理を進めつつ、その過程で深化した各視点からの地域圏の認識を対照して、「地域圏の析出とその評価」について議論を重ねた。 また、寧夏回族自治区において、現地調査を実施した。城郭・墓葬などの遺跡と出土遺物に関する知見を収集し、地理環境を実感することにより、地形利用や領域という視点から地域社会の景観について検討を進め、漢代の安定郡・北地郡に対する認識を模索した。 漢代の地域圏に対する検討は予察の域にとどまるが、考古情報や文献情報という資料形態にとらわれることなく、「王権の戦略」と「地域の紐帯」を対照して漢代の地域圏の実態を評価する取り組みや、地理環境や生業適応など地理学的検討を反映した地形利用図を重ねることによって、漢代の地域圏を相対化する取り組みを進め、一定程度の成果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本において進めている地理情報と歴史情報の収集は、おおむね当初の計画通り進んでいる。また、寧夏回族自治区における調査を実施したことにより、現地において地理景観に歴史情報・地理情報を重ねた漢代地域圏の検討が実現している。第1年度、第2年度に計画した事項は、順調に遂行しつつあると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、3年計画の最終年度にあたり、研究成果の公開に向けた取り組みが主な課題となる。本研究課題では、地理情報と歴史情報を重ねた研究基礎情報と、それに基づいた漢代地域圏に関する認識を、研究成果として提示する計画である。ともに、書籍(報告書)での公開を目指す。研究基礎情報に関しては、対象とした地域も広汎に及び情報量も多いため、その提示の方法には少し検討が必要である。後者の「地域圏」で議論する地域に絞ってより詳細に情報提示をすることなどの対策を講じる予定である。
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