2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22520782
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Research Institution | (財)元興寺文化財研究所 |
Principal Investigator |
小村 眞理 財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (10261215)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木沢 直子 財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (50270773)
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Keywords | 東アジア / 組紐製作技法 / 斜行組織 / 復元実験 / 蓮山洞8号墳 / 池山洞44号墳 / 敦煌出土平組紐 / ループ操作技法 |
Research Abstract |
調査では、平成23年6月12日-16日の日程で、中国江西省を訪問し靖安縣博物館にて李洲〓東周墓出土品を観察した。春秋晩期に比定される資料は、組紐に特徴的な図柄を表出していたが、経緯の組織からなる織物であった。本資料が斜行組織であるとの予想は覆されたが、この図柄が斜行組織より派生したものであることは、模様の特徴に照らして推断可能である。このため、直接の証拠でないとしても、春秋晩期に2色ループを用いた組紐技法が存在したことを同様に推断できる。本遺跡からは赤と黒の糸で狩猟紋様を表出する錦をはじめ300点以上の染織も出土しており染織技術の起源、伝播について中国国内でも注目されるところである。 一方、韓国出土品の調査結果を含めて、中国美術学院(杭州 2011年10月22-23日)国際学術研討会に招聘され、古来の組紐技法についての研究成果を発表する機会が与えられた。中国ではこのような技法についてまだほとんど認識されていないため、今後の中国での研究の発展につながることを期待している。 また文献からの情報収集を通じ、敦煌出土品(大英博物館所蔵スタインコレクション)にも絹製平組紐がみられることが判った。この特徴が正倉院宝物にも確認されているループ操作技法に通じることが復元的な検討の結果、理解できるようになった。これまで漠然と大陸や朝鮮半島からの影響が示唆されてきただけだが、韓国の蓮山洞8号墳、池山洞44号墳などの例とあわせて、古代東アジアの具体的な状況を議論することが可能になった意義は大きい。 復元については、漢代の斜行組織(綬や冠などの素材となる組織)の復元を計画している。資料の復元に際し基本となる部分的な実験を終えることができ、糸つくりに必要となる条件は理解できた。これに塗布する漆の選択について判断が難しいため実際の復元作業を進められていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
漢代の斜行組織(綬や冠などの素材となる組織)の復元を計画しているが、資料の復元に際し部分的な実験を終えることができ、糸つくりに必要となる条件を確認した。これに塗布する漆の選択について判断が難しいため実際の復元作業を進められていない。調査では、江西省靖安縣博物館にて李洲〓東周墓出土品を観察した。春秋晩期に比定される資料は、組紐に特徴的な図柄を表出していたが、経緯の糸で構成された織物であった。
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Strategy for Future Research Activity |
中国美術学院での国際会議の際、オーストラリアの発表者から、古代の織成技術に関する分野で業績のある米国の研究者の紹介を受け連絡をとったところ、染織品・染織技術の歴史に関しての言語学的な研究の成果として明らかなこととして、組紐(braid)は麻(flax)の繊維に由来するとの情報が得られた。中国での製作も、絹以前には麻が用いられていたと思われるため、東アジアへの伝播については西アジア等、より広範な地域の影響を考慮する必要が生じた。このような視野の元、組紐製作技法と、共通の素材を使用する織物製作技術、技術史について東アジアにとどまらず世界的な考証を試みていきたい。
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Research Products
(3 results)