Research Abstract |
本研究は,香川県東かがわ市を中心に展開する手袋産業と愛媛県今治市を中心に展開するタオル産業を事例として,大都市圏以外の地方に立地する地場産業企業群のグローカル展開の質的変容の特徴を地理学的な視点から解明することを目的とする.現在,上記地場産業は,そのグローカル展開の質的転換期にある.22年度はまず,基礎的な資料を用いて,当該地場産業の全国的な位置づけを行うとともに,地場における現地調査を通して,当該産業の最新状況を確認した.つづいて9月には,海外における最大の生産基地である,中国における展開状況を明らかにするため,北京と上海地域において,JETRO事務所,事例進出企業等において聞き取り調査を実施した.さらに,12月から23年1月にかけて,同業者組合の協力を得て,東かがわ市地域の手袋関連企業に対するアンケート調査を実施した.東かがわ市地域には,100社程度の手袋関連企業が集積している.当該地域の手袋産業は,1世紀を超える歴史を有し,現在なお生産額で全国シェアの90%を占め,県が全国に誇る地場産業の1つである.当初は,1970年代以降,海外の生産者との競争が激化し,内需へより比重をおく戦略転換が図られる一方,手袋生産技術を生かした関連新製品の開発にも力が入れられてきた.早くから積極的に海外に展開し,現在,身の回り製品全般を扱う総合産地へと脱皮を図ろうとしている.一方,愛媛県今治市には,同じく1世紀を超える伝統をもつタオル関連企業群が集積している.当該産業は,古くからの綿産業を基礎として発展し,1960年代には国内最大のタオル産地となった.その後,海外企業との競争が激しくなり,1980年代以降海外への進出が図られ,中国沿岸部(南通市,大連市,天津市)が一大生産基地となっている.いずれの産地においても,地場の機能維持が課題となっている.
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