2011 Fiscal Year Annual Research Report
伝統的飲食文化の展開とそれらを核とする地域振興に関する研究
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22520801
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
中村 周作 宮崎大学, 教育文化学部, 教授 (00305062)
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Keywords | 熊本県 / 伝統的飲酒嗜好 / 伝統的魚介類食 / 地域振興 / ツーリズム |
Research Abstract |
研究内容:平成23年度は,熊本県を事例として22年度に行った伝統的魚介類食に関する658件の聴き取りアンケート調査データの分析を行い,県内の伝統魚介料理が分布上7タイプに分類されるなど,新たな知見に関して論文化(教育文化学部紀要論文)した。並行して県内109件の小売酒屋に対する聴き取りアンケート調査データの分析から,熊本県における地域的飲酒嗜好が5地域に分かれることなどを解明した。その後,具体的な酒に関わる地域拠点である造り酒屋7件を訪問して聴き取りおよび酒蔵見学調査と魚食に関して県が指定する「食の名人」に依頼しての調理実演観察調査4件を実施し,地域でも失われつつある伝統魚食を含めて貴重な記録を得ることができた。さらに,追跡調査として,地域の活性化を図るために他所から客をよんでくる酒と魚に関する拠点をめぐるツーリズムプランを構築するための地域調査を実施した。それら一連の研究成果を公開し,地域振興に貢献することを目的に,学会における口頭発表(23年6月」地理空間学会招待発表)をし,その後,原稿をまとめて研究成果の書物化を行った(24年3月発行,『熊本酒と肴の文化地理-文化を核とする地域おこしへの提言-』,熊本出版文化会館,A5版215ページ)。 研究意義・重要性:従来,熊本県域における魚介類食,飲酒嗜好ともに,具体的な研究が全くなされていなかった点,新たな知見を加えることができたこと,さらにワールドワイドに研究情勢をみても,このような小地域における詳細な研究は見られないということからも,本研究の意義・重要性は大きいといえよう。新幹線が開通して他所から人が来やすくなり,熊本市が政令指定都市になるなど,地域活性化の種の多い当該地域で地域振興の花が開く,その核として地元で長年培われてきた伝統文化の重要性を指摘することで,地域に対する貢献を図ることができたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標どおり,4年間の研究機関を2つに分け,前半の2年で熊本県の酒と肴の調査を終えて著作化し,研究成果を世に問うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度(24年度)から後半の2年間ということで,新たに大分県における酒と肴の調査研究に入る。24年度には県立図書館などで伝統魚食に関する文献研究,関係機関や関係者に対する聴き取りなど予備調査を実施し,小売酒店と伝統魚食に関する聴き取りアンケートを作成,調査を実施し,得られたデータの分析,論文化を図る。次で25年度には,造り酒屋や現地における調理実演調査,ツーリズムメニューの構築のための現地調査を進め,『大分酒と肴の文化地理』の著作を完成させる。
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