2010 Fiscal Year Annual Research Report
樺太観光におけるまなざしの形成とマイノリティの表象
Project/Area Number |
22520812
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宮下 雅年 北海道大学, 大学院・ツディア・コミュニケーション研究院, 教授 (90166174)
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Keywords | 北 / 樺太 / サハリン / 観光 / 北原白秋 / フレップ・トリップ / 三浦綾子 / 天北原野 |
Research Abstract |
1.樺太紀行文として北原白秋の『フレップ・トリップ』を取り上げ、本作品における風物・風習・異民族の記述から白秋の樺太イメージを考察し、アイヌをめぐる記述の不備を批判する一方、とりわけ「海豹島」の自然描写が、白秋の童謡論における「童心」すなわち「思無邪の物我一如の境」の擁護に見られるような、この作家の近代日本社会批判に通じることを指摘した。 2.樺太がしばしば三浦綾子その他の「大衆小説」の舞台となるのは、この島の所有、譲渡、奪還、略奪という歴史的事実が男女の愛憎劇のプロットと重なりやすく、ロマンスの格好の舞台になるためであることを指摘した。 3.これらは論文「樺太鏡像-北原白秋『フレップ・トリップ』と三浦綾子『天北原野』」にまとめ、The Northern Review(No.37,2011.3)に掲載した。 4.平成22年8月に1週間ユジノサハリンスク周辺で現地調査を行った。日本統治時代の観光・行楽地-シネゴルスク・サナトリイ(旧川上温泉)など-で施設利用者から聞き取りをし、また、現存する日本民家-ダーチャや社宅として今も使われている-を訪問して居住者にインタビューをした。 5.上の調査に基づいて、平成22年12月、北海道大学観光学高等研究センター主催の公開講座「旅の楽しさを考える」(受講者約70名)において、「樺太観光とサハリン・ツアー」と題して、往時の日本人の暮らしぶりに言及しながら、今日サハリンで行われている日本人向けの観光ツアーの模様を報告し、墓参あるいは望郷の旅から(引揚者以外の日本人の関心を喚起する)へリテージ・ツーリズムへ向かう、新たな観光の可能性があることを紹介した。
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Research Products
(1 results)