2011 Fiscal Year Annual Research Report
難民となった牧畜民の生存にかかわる経済活動の人類学的研究
Project/Area Number |
22520814
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
曽我 亨 弘前大学, 人文学部, 教授 (00263062)
|
Keywords | ガブラ・ミゴ / グジ / 民族紛争 / 比較優位 / 経済活動 / 難民 / エチオピア |
Research Abstract |
本研究の最終的な目的は、難民問題の恒久的手段として「地域に恒久的な安定をもたらす開発のありかた」の提示を試みることである。UNHCRは「難民と現地住民との双方に同時に利益をあたえる開発」を提唱しているが、この研究では、井戸を掘るといった「場所の価値」を高める開発でなく、地域のなかに、複数の民族にまたがる相互依存の関係を作りだす経済活動に着目する。なぜならば、「場所の開発」は、その場所を稀少な資源へと変換してしまい、あらたな紛争の原因にもなりかねないのである。 平成23年度は、南エチオピアにおける半ば難民的状況にある牧畜民が、自らが置かれた家族・社会・経済状況のなかから創造しつつある新たな経済活動を記述するために、約1ヶ月間の現地調査をおこなった。とくに、現地協力者による記録をもとに、ラクダの交易活動の実態を詳細に再現していった。さらに交易活動に参加した現地の人びとの記録をもとにインタビュー調査をおこない、ガブラ・ミゴとグジの両民族の共同関係を詳細に復元していった。その結果、ラクダ交易のメカニズムを詳細に解明することができた。 その成果の一部は、11月にモントリオール市で開催されたアメリカ人類学会で発表し、東アフリカの牧畜社会における有効な開発のあり方として提示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、当初、東日本大震災の影響で授業期間が延び、長期調査ができなくなったため、調査が遅れることが懸念されていたが、現地で家畜交易の記録をとってくれている協力者とskypeを通じて緊密に連絡を取り続けた結果、質量共に予想を遙かに上回るデータを取得することができた。これにより研究を大きく進展させることができ、アメリカ人類学会でも最新のデータを入れた発表が可能になった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の成果をもとに、平成24年度も現地調査ばかりでなく、現地協力者と緊密に連絡を取りながら、調査を進めていく。また、平成24年度にはケニアの国会議員選挙が計画されており、選挙後には社会的混乱も予想されるので、選挙前を中心に重点的な調査をおこなう。
|
Research Products
(4 results)