2012 Fiscal Year Annual Research Report
難民となった牧畜民の生存にかかわる経済活動の人類学的研究
Project/Area Number |
22520814
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
曽我 亨 弘前大学, 人文学部, 教授 (00263062)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 難民 / 民族紛争 / 経済活動 / エチオピア / ガブラ・ミゴ |
Research Abstract |
本研究の最終的な目的は、難民問題の恒久的手段として「地域に恒久的な安定をもたらす開発のありかた」の提示を試みることである。UNHCRは「難民と現地住民との双方に同時に利益をあたえる開発」を提唱しているが、この研究では、井戸を掘るといった「場所の価値」を高める開発でなく、地域のなかに、複数の民族にまたがる相互依存の関係を作りだす経済活動に着目する。なぜならば、「場所の開発」は、その場所を稀少な資源へと変換してしまい、あらたな紛争の原因にもなりかねないのである。 平成24年度は、南エチオピアにおける半ば難民的状況にある牧畜民が、自らが置かれた家族・社会・経済状況のなかから創造しつつある新たな経済活動を記述するために、約2週間の現地調査をおこなった。とくに、現地協力者による記録をもとに、ラクダの交易活動の実態を詳細に再現していった。さらに交易活動に参加した現地の人びとの記録をもとにインタビュー調査をおこない、ガブラ・ミゴとグジの両民族の共同関係を詳細に復元していった。その結果、ラクダ交易のメカニズムを詳細に解明することができた。 分析を進めると、ラクダの交易活動が難民生活をおくるガブラ・ミゴの人々の生計に重要な意味をもつことが明らかになってきたが、その反面、異民族グジとの協力関係は進んでいないことも明らかになってきた。この経済活動にも、あらたな紛争の原因となる潜在的危険性が認められる。異民族の相互依存の関係については、より詳細に検討する必要がある。 平成23年度に入手したデータの分析も進め、その結果をまとめて5月に開催された日本アフリカ学会で発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、平成23年度に入手したデータの分析も進め、その結果をまとめて5月に開催された日本アフリカ学会で発表することができた。 また、調査に関しては、現地調査の日程を十分確保できなかったことから、調査が遅れる懸念があったが、現地協力者と緊密に連絡をとることで、平成23年度をうわまわる高い質・量を備えたデータを入手することができた。現在、その分析を進めているが、今年度も5月に開催される日本アフリカ学会で発表を予定しているほか、11月にはアメリカ人類学会での発表も予定している。以上のように、調査は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、まず平成23年度、24年度に収集したデータの分析をさらに進めていく。新たな経済活動が、異民族との相互依存を深めているかどうかは、本研究の重要な柱となるので、この部分については詳細に検討していく必要がある。 夏には現地調査を行い、これまでのデータから生成した仮説を検証していく。また新たに平成25年1月~8月までのラクダ交易データを補完することで、3年以上におよぶ交易データを完成させる。さらに秋からは平成23, 24, 25年度のデータを統合して分析を進め、11月のアメリカ人類学会で発表する。 これまでの研究は順調にすすんでおり、今後の推進法策に変更はない。
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Research Products
(4 results)