2011 Fiscal Year Annual Research Report
ワークライフバランスをめぐる政策と実践の人類学的研究:オランダの事例から
Project/Area Number |
22520823
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中谷 文美 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 教授 (90288697)
|
Keywords | オランダ / ワークライフバランス / ジェンダー / 社会政策 / 労働 / ケア / 文化人類学 |
Research Abstract |
今年度は実施済みのインタビューの内容を整理するとともに、オランダでの長期調査において、これまで十分カバーできていなかった属性の対象者(年金生活者、子どものいないカップル、シングルマザー、専業主婦)に補足インタビューを実施したほか、過去のインタビュー対象者の一部についても、フォローアップ調査を行った。この結果、個々のインタビュー対象者が置かれた職場や家庭の状況は多様であるにもかかわらず、全体を通してみると、「仕事」と「ケア」の両立をめぐっては個別の差異を超えた、いくつかの共通パターンが浮かび上がることが明らかになった。同時に夫婦ともにフルタイムの週5日勤務を続けるケースと妻が専業主婦となるケースは、数の上で少数派であるばかりでなく、社会的にも周縁的な存在と認知されている点が重要であることがわかった。 また、日本やEUにおけるワークライフバランス政策に関する文献や統計資料を収集することによって、オランダ社会の事例が持つ意味を多角的に考察することが可能になった。とくにヨーロッパでは、全体として女性の就業率が拡大する中、さらなる就業促進と同時に保育政策の充実や育児休業制度の整備を通じ、男女双方にとって職業生活と家庭生活の両立をより容易にすること、さらに男女平等の観点から、男女の賃金格差や職域分離など、雇用におけるジェンダー格差を解消すること、また家庭内の育児・家事分担の均等化を進めることにより女性の過重負担を和らげることなどが主要な政策課題として認識されている。この中でオランダは、パートタイム勤務の均等待遇をいち早く実現することにより、安定した雇用制度の下で家庭内でのケアにも一定程度従事することができる条件を整えた国である。ケア労働のジェンダー配分については依然として問題があるものの、日本の現状に照らしてみれば、学ぶべき点が多々あることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
多様な属性を持つ対象者に対するインタビューが当初の計画以上に順調に進行しているほか、関連資料の入手も計画以上に進展している。ただし、時事的なトピックでもあることから、毎年度新たな関連資料が入手可能になるため、継続的調査が必要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画に沿った形で、来年度もインタビュー実施および関連資料収集を中心とするオランダでの現地調査を継続する。国際比較に用いるデータ入手のため、ILO駐日事務所や労働政策研究・研修機構の付属図書館など、国内でも資料収集実施する予定である。
|
Research Products
(4 results)