2011 Fiscal Year Annual Research Report
周縁化する島嶼社会を支える「島での生活」の意味と価値
Project/Area Number |
22520824
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
北村 光二 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 教授 (20161490)
|
Keywords | 瀬戸内海 / ミクロネシア連邦 / ヤップ島 / 島嶼社会 / 交換価値 / 意味と価値 / 共同体的生活 / 本土 |
Research Abstract |
本研究は、ごく限定的な資源利用にとどまらざるをえないという条件を抱える島嶼社会を対象に、「島での生活」が今後も維持されるようになるために不可欠な条件とはなにかを考えるという観点から、人々が島での生活に見出すべき「意味と価値」を明らかにしようとするものである。本年度は、瀬戸内海島嶼部とミクロネシア連邦ヤップ島における現地調査を行ったが、「世代を超えて継承されてきた生活実践」の持続と変容を考えるうえで、共同体の外部から力を及ぼす、その外部を包含するより大きな抽象的な領域における競争に引きずり込もうとする勢力との対峙においてどのような選択を行うのかということと、そのような競争に関与しながら、生き続けるという課題に対処しようとして行われる、特定の地域に根拠を持つ共同体的生活というまとまりを維持するための選択を考えるということの二つの点が重要だと考えられた。 1.外部勢力との対峙における選択 ・ヤップ島においては、主食となるイモや漁獲物などの自らの労働が生み出した物品の売買が全く行われておらず、それらを交換価値に置換して、その交換比率を競い合うというかたちでの外部勢力との競争を一方的に忌避していると考えられた。 2.共同体的生活というまとまりの維持 ・ヤップ島においては、本島内の階層構造のみならず、それ以外の周辺の小離島との支配/従属関係が、「より大きな共同体の内部に自らの生活領域を位置づける」ことを可能にし、共同体的生活というレベルのまとまりを生み出していると考えられるのであり、それは、外部を包含するより大きな抽象的領域における競争的対峙とは全く別のものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の方法論上の特徴は、「本土」への強い依存関係のもとにあり続けてきた瀬戸内海島嶼部と、太平洋上にあって外部世界からは孤立して存在してきたヤップ島を比較するという点にあるが、これまでの研究によって、その対比をどのように進めるべきかについての明確な方向づけが得られたから。
|
Strategy for Future Research Activity |
瀬戸内海島嶼部とミクロネシア連邦ヤップ島との比較において、明確に対照的な特性として、瀬戸内海のそれぞれの島嶼社会がより平等的な性格が顕著であるのに対して、ヤップ島は伝統的にも現在においても、階層的社会という性格が人々の生活に強力な影響を及ぼしている。生業や資源利用の権利配分、外部世界との関係のあり方などを手がかりに、この種の差異を生み出している要因を解明することを目指す。
|