2010 Fiscal Year Annual Research Report
東欧系移民労働者の流入によるイングリッシュ・カントリーサイドの変容の分析
Project/Area Number |
22520836
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
三枝 憲太郎 関西大学, 政策創造学部, 准教授 (90454595)
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Keywords | 社会人類学 / イングランド / 移民 / 拡大EU / カントリーサイド / 住民運動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、2004年のEU拡大以後、急激に増加した東欧系移民労働者が、農村部の地域社会に与えてきた影響を具体的に明らかにすることである。平成22年度は、研究計画に従って、2月から3月にかけて2週間弱、イングランド中西部にある農業県ヘレフォードシャ北部のマーケット・タウンであるレムスター近郊においてフィールドワークを実施した。この地域ではイギリス最大の果樹栽培企業が移民労働者村の建設を行おうとして、地元の強力な反対にあって断念した経緯があり、移民労働者の労働・生活条件をめぐるトラブルも発生し、その詳細は全国的なメディアで報道されている。こうした移民労働者の出現をめぐる様々な「事件」に際して、地元の人々は、二つの住民組織を立ち上げ、その変化に対処してきた。今回の調査では、その一方の組織、すなわち、移民たちの労働ならびに生活条件の改善を積極的に要求してきた組織の代表者を中心にインタビューを行なった。その結果、具体的な事実を通して明らかになったのは、いわゆるサーヴィス・クラスとして知られている人々が、その職業的キャリアにおいて獲得してきた人的ネットワークと様々な実務能力を地域の問題解決に向けて積極的に援用していること、ならびに、既存の地域社会集団がきわめて柔軟に「問題」を解決するために連携をとる形で活動を行なっていることであった。また、そうしたアド・ホックな活動を中心となって立ち上げ、地域の人々を巻き込んで強力に推進していたのは、都市からの移住者たちであった。
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