2012 Fiscal Year Annual Research Report
インフォームド・コンセントの法社会学―動態分析に基づく行動規律モデル
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22530001
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
中西 淑美 山形大学, 医学部, 准教授 (20420424)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | インフォームド・コンセント / リスク認知 / ナラティヴ / メディエーション / 自己決定 |
Research Abstract |
平成24年度の研究実施計画の9項目は、当初の計画以上に達成した。収集したデータについて分析、要因連関のパターンモデルを抽出するための研究調査、海外の情報・文献収集の検討から、ICとはどのような要因によって規定されるのかについての調査を進め、学会発表や論文作成を実施した。 ①フランス、中国の医療制度調査など、文献・判例等の基礎研究を実施し、2012年6月Law and Society で、演題名 「Preventing Medical Malpractice: An International Comparison 」で発表した。②7月「有害事象への対応(国際比較)」としてトヨタ財団シンポジウムで発表した。③医療者の職種別ストレスと医療安全の関係について解析し10月日本医療・病院管理学会で発表した。④医療コンフリクトマネジメント学会で健康概念との関連を発表した。⑤生理学的な変化に着目した自律神経系の研究結果を10月自律神経学会で発表した。また、11月臨床麻酔科学会でも別の観点からICに及ぼす影響としてポスター発表した。⑥前年度学会発表した医学教育での共感研究の一部を論文にまとめ公刊された。⑦2013年3月中国の上海交通大学で開催されたEast Asia Law and Societyで、「Promise of Mediation Approach in Healthcare Settings in Japan」を発表した。また、上海法政学院大学で医師と患者の信頼関係について学生講義を実施した。 ⑧診療報酬政策の患者サポート支援体制の医師患者関係の対話モデルとして、2012年4月より医療メディエーションモデルの研究データが採用され、厚生労働省の基本策定資料として提示された。 ⑨共感とMediationモデル、医療メディエーションと有害事象対応など論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、研究・調査・分析・学会発表・論文作成・論文発表と、非常に努力した。以下、5点に簡潔に述べることとする。 ①全国規模の学術集会で、研究に関連した調査を実施し、解析した結果について、国際学会2学会、国内学会3学会で発表できたこと。 ②医療政策として、診療報酬体制に、医療メディエーションモデルが基本策定資料として採用されたこと。 ③患者・家族・市民団体を対象にした「不快情動」における紛争の情動因子と医師の態度との関係において、医学生理学的実験研究や質的研究の検討から、専門領域の医療メディエーションモデルとの影響を明らかにできそうな手応えを感じていること。 ④英語論文2編、邦語論文3編を公刊できたこと。 ⑤まだまだ法社会学的には学究し進展させて行く必要があるが、インフォームド・コンセントとリスク認知の要因分析から、共感・意思決定と医療メディエーションモデルとの関係をあきらかにできたこと。
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Strategy for Future Research Activity |
医学生理的なエビデンスを追求し、医療メディエーションとリスク認知、ナラティヴ論などと、関係性の状況学習論の方策を追及して、医療の安全と質に寄与したい。そのために現在の複合領域の研究調査を続けていくこととする。質と量の混合研究で、平和の概念である医療メディエーションの法動態学としての紛争処理論を研究していきたい。そうすることが医師・患者関係、患者の権利、臨床倫理へつながる大きな政策的研究へ連関していくと考えている。研究調査の結果にある実際の患者さん・被験者・医療者等の当事者からの満足感を形にしていくための方策を、先行研究、海外調査・学会などで探求する。但し以下の問題がある。 所属大学での研究にあたって、個別の医師の同意がとれても、患者・家族との同意をとるには、高度先進医療機関であるため、難しい病態になっていることがある。また、紛争事案になったものでは、個人情報保護の観点から、同意が得られにくいため、倫理面に配慮しながら、研究への理解と同意を得るように努力する必要がある。 同意と承諾を得たうえで、倫理規定に基づきながら、参与観察による質的対象とのデータの収集の策定を熟考し、協力医師や対象となる市民ボランティアでの協力が不可欠である。IC過程に影響するファクターから、生理学的な変化に着目し、自律神経系の研究を推進する必要がある。質的分析のソフトや備品が高額なため、客観的指標のためのソフトの購入をせざるを得ない。また、さまざまな要因を考慮するために、先行研究や文献、情報収集を重ね、再度検討、地道に研究のための研鑽を積む必要があり、研究支援体制や協力が常に必要である。
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Research Products
(25 results)