2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530016
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
本野 英一 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (20183973)
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Keywords | 中外渉外民事訴訟 / 上海会審衙門 / 中米経済関係 |
Research Abstract |
本年度の活動は、史料収集のみで終わった。すなわち、国内では、4月から7月に外務省外交史料館で、上海会審衙門に関する未公刊ファイルを見つけ、その中から1905年から1925年に関する公文書を見つけ、8月にこれを解読した。さらに、9月には、アメリカに出張し、アメリカ国立公文書館で、同時期の上海会審衙門で行われた、在華アメリカ企業が中国企業を相手取って起こした、様々な債権債務訴訟、契約違反訴訟に関する英語、中国語で書かれた様々な公文書記録を写真撮影した。分量は、二〇〇〇枚にも及び、目下は、その整理解読中である。今回の取材で入手した史料の基本的意義は、次の通りである。在華外国企業が中国商人、中国企業を相手どって起こした民事訴訟記録は、19世紀後半以来少なくないが、その大半が、英国企業を一方の当事者とするものばかりであり、従ってその記録も、当時の新聞記録に掲載された裁判記録は、全て英語で書かれている。イギリス領事館や中国地方政府も巻き込んだ一大事件に発展すると、外交交渉議案となるため、双方で公文書が作成され、これがイギリス国立公文書館領事報告に残された、英文、漢文文書の膨大なファイルに残されることになる。しかし、こうした係争事件は、中国の対外経済関係にイギリスが占める比重が低下する20世紀初頭以降になると、格段に少なくなってしまい、当時の渉外民事事件の処理、その社会的影響を知ることが困難になってしまう。これを埋める形で利用可能なのが、今回集めてきた文書史料であり、特に少なからぬ草書体で記された中国側の記録(公文書、書翰)は、これまで誰も利用していなかった記録ばかりであり、その分析内容は、当該時期の日本、イギリス外務省記録に残された裁判制度の変遷を側面から裏付けるものとして、非常に有益であり、次年度以降に、その分析結果を発表していく予定である。
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