2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530022
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中原 茂樹 東北大学, 大学院・法学研究科, 教授 (60292819)
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Keywords | 公法学 / 誘導 / 制裁 / 環境税 / 課徴金 / 過料 / 行政刑罰 / 占用料 |
Research Abstract |
誘導手法に関する法理論的検討の手がかりを得るため、議論の蓄積のあるドイツ法を参照した。ドイツにおいては、1999年にいわゆるエコロジー税制改革(電気税の導入と鉱油税の段階的引上げにより、エネルギー節約への誘導を狙うとともに、その税収を年金保険料の引下げに充てることにより、雇用の拡大を狙うという「二重の配当」の考え方に基づく改革)が行われた。そして、その合憲性をめぐって2004年に連邦憲法裁判所の判決が下され、誘導目的の租税に関する従来の判例を踏まえた詳細な判断枠組みが示された。さらに、この判決をめぐって、憲法、環境法、財政法等の観点から、多数の判例評釈や論文が発表されている。これらについての分析・検討を行い、その一部を環境法政策学会誌に公表した。 また、道路占用料をめぐる法的問題について、占用料が有しうる誘導機能(景観、環境政策、地域の活性化等に資する取組みに誘因を与えるための減免や増額等)や制裁機能(不法占有者に対する占用料相当額またはそれを上回る額の課徴金の徴収)にも着目した検討を行い、国際交通安全学会誌に公表した。 さらに、行政刑罰、過料、課徴金、制裁的公表等の行政制裁手段について、わが国における法理論的問題(行政刑罰の機能不全、過料に関する一般法の欠如、課徴金と制裁との関係をめぐる議論、行政指導違反事実の公表をめぐる問題、等)をドイツにおけるそれと比較しながら検討し、その一部を、日独双方において(日独シンポジウムの記録集に)公表した。 これらの検討を通じて、行政上の制裁および誘導をめぐる法理論的問題を総合的に検討するための、重要な端緒および基礎が得られたものと考えられる。
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