2010 Fiscal Year Annual Research Report
地方分権・地方自治の方向性ー組織的・作用的協働関係の観点から
Project/Area Number |
22530023
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
飯島 淳子 東北大学, 大学院・法学研究科, 准教授 (00372285)
|
Keywords | 公法学 / 地方分権・地方自治 / 協働 |
Research Abstract |
平成22年度は、主にフランス法を対象として、契約化現象の現状分析と法的把握を行うことを介して、地方分権と協働との関係に迫る試みを行った。 まず、契約化という曖昧模糊とした現象につき、契約的手法の当事者を基準とし、実定法制度を可能な限り体系的に整序することを通じて、その全体像を提示・画定することを試みた。その際、公的組織・私的主体間契約(公的組織・民間事業者間の契約、公的組織・非営利社団間の契約および公的組織・個人間の契約)、公的組織相互間契約(国・その他の公的組織間の契約および地方公共団体相互間の契約)、および、公的組織内部契約という三分類を採用し、それぞれについて、主要類型を描出し分析を行った。 その上で、行政法学にとどまらない学際的な営為を考察の対象とし、これらを横断的・総論的に分析する視角を抽出した上で、フランス法の理論動向を再構成し、問題の基本構造を解明することを試みた。契約化は、一方的手法を基本的な考察対象とする公法学と契約を基本的な考察対象とする私法学との狭間に位置している。かかる谷間現象は、まずは、既存のカテゴリーによって把握し、既存の法規範によって規律されるべきであろう。しかし、既存の枠組みによる把握・規律が適切であるかが問われるのに加え、既存の個々のカテゴリーへの分解・分断の妥当性、そして、既存のカテゴリーによる把握の可能性自体が、大本から問われる。それゆえに、既存の枠組みに準拠せず、契約化そのものを把握・規律しようとする真摯な挑戦が続けられている。フランス法の40年におよぶ試行錯誤から得られる一つの示唆として、当事者が互いの意思にのみ拘束される、すなわち、基本的には当事者の意思を縛らない私法学的発想を取り入れつつ、公益に対する責任ゆえに公的組織の自由を認める、すなわち、基本的には公的組織の意思を縛る公法学的発想が、依然として基盤とされるべきであるということが導き出された。
|