2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530024
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
青山 慶二 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (50431664)
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Keywords | 公法学 / 国際租税法 / 租税条約 |
Research Abstract |
本年度は、同テーマについての議論が進展した国際租税学会(IFA)や国連・税の専門家委員会に出席して、(1)各国課税当局による代理人課税への取組状況の変遷を聴取するとともに、(2)各国の動向に対する国際機関のルール調和に向けた活動をもフォローした。また、(3)この課税問題に関してこの1年間に発表された学術論文やデータベースを入手しそれらを比較検討するとともに、(4)国内経済団体との意見交換をも踏まえながら、国内法ベースと租税条約ベースに区分したこの問題に関する処方箋のドラフトのとりまとめに着手した。 まず、国際会議ではIFA(フランス開催)に参加し、「国境を越えた事業再編成」に関する全体会合と「代替的な法人税の課税ベース」に関する分科会の下での代理人課税に関する議論を参照できた。また、自らが委員となっている国連・税の専門科委員会では、国連モデル条約2011年改訂版において途上国の代理人PE課税のスタンスが反映された形でコメンタリーが取りまとめられた点と、移転価格分科会でのフォーミュラ課税方式への途上国の熱意を確認することができた。これらは、国際課税のルールが、今後OECDと国連の両者間で乖離する方向性を示唆しており、注目に値すると考えられる。 次に新規の文献入手によるリサーチ活動に関しては、2010年に改定されたOECDモデル条約、同移転価格ガイドラインに関して発表された諸評論をチェックし、無形資産の認定やPEへの帰属所得の算定のあり方が、依然として学界・実務界の大きな関心となっていることを確認した。あわせて、この問題に対する諸国の税制改正によるアプローチの中で注目される出国税構想についても、リサーチ対象を広げた。 最後に国内における産業界との研究会におけるヒアリングを通じて、アジア諸国での代理人課税攻勢が活発化しつつあることを確認し、政策協調に関しては、アジアを中心とした新興国に対する働きかけの必要性を認識した。これらを踏まえて、国内法・租税条約の両面にわたる処方箋のドラフトのとりまとめを最終年度に行うこととしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予期していた国際会議での研究テーマの消化状況は順調であり、その中で(1)先進国・途上国間の意見対立の先鋭化が見られることと、(2)グループ会社間での無形資産取引のルール化に向けたOECDの取組みが遅れ気味となっている、という情勢変化はあるものの、研究材料は保母で尽くした印象である。並行して行っている国内産業界からのヒアリングでは、景気低迷の下で海外に所得稼得の場を求めざるをえない本邦多国籍企業が新興国で直面する課税とその救済策について、すでに多くの具体的経験をつんでいるため、対処案策定のベースとなる多くの実証的素材の提供を得ている。 残された処方箋の取りまとめにおいては、先進国・途上国で二元化するおそれはあるものの、国連の会議における調和に向けた努力を反映するかたちで提言が可能と予測されている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である24年度においては、IFAの主要テーマとされる「国際課税に関する紛争解決」のパネル討議に参加することが予定されており、今回の研究テーマに関するいくつかの処方箋について他のパネリストと突っ込んだ意見交換が期待できる。それによりスクリーニングを経た提言は、より説得力を増す可能性が期待できる。 なお、経済団体との研究会においても、国外の団体を招いての意見交換を通じての連携効果が期待されている。
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Research Products
(3 results)