2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530031
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
愛敬 浩二 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (10293490)
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Keywords | 公法学 / 政治学 / 憲法学 / 法哲学 |
Research Abstract |
グローバルなレベルで確認される「立憲主義の興隆」が、憲法理論に対して、どのような影響を与えるのかを検証することが本研究の課題である。その際、「憲法改革」以前は、政治哲学等との共同が限定的であったイギリス憲法理論が、「憲法改革=憲法秩序の立憲主義化」の後、どのような変容を被ったのかを分析する。平成22年度の当初の計画では、「憲法改革」を境として、憲法理論の動向が本当に、激的な変化をしたのかを検証するために、(1)A・V・ダイシー『憲法研究序説』以降の主要な憲法理論(I・ジェニングスなど)の研究、(2)「憲法改革」以降の憲法理論の動向に関する調査、とりわけ、イギリス憲法研究者の自己理解の調査を行うことを予定していた。実際には、1998年人権法制定後の憲法理論の動向に関する調査を「法的立憲主義の主流化と憲法理論」と題する論文にまとめる一方、9・11事件以後の英米憲法理論(とりわけイギリス)の動揺を「法の支配」論の観点から整理する論文を公刊した。いずれの論稿も、日本の憲法学において研究成果の乏しいイギリス憲法理論の紹介・分析を通じて、日本の比較憲法学の議論を多元化・豊饒化させようとしたものである。 以上の研究は主に前述の(2)の課題に関わるものである。イギリス憲法理論の変容が激しく、その動向のフォローに追われたため、(1)の基礎的研究に十分な時間を割くことができなかった。ただし、当初の計画とは別に、日本の憲法理論が立憲主義の興隆との関係でどのように変容したかを調査・研究し、その成果の一部を学会報告等で公表することができた。イギリスと日本の憲法学説の理論動向を「憲法史への関心」という観点から把握・整理する視点を得たので、今後はこの視点を活かしつつ、比較憲法研究を継続したい。
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