2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530034
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大日方 信春 熊本大学, 法学部, 教授 (40325139)
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Keywords | 表現の自由 / 著作権 / 特許権 / フェア・ユース |
Research Abstract |
本年度の大きな成果は、本研究補助金の交付をうけた昨年度及びそれ以前から研究してきた著作権と憲法理論の関係に関する基本的理論をまとめた単著を公表できたことである(『著作権と憲法理論』信山社刊)。その内容は、著作権設定の意義を論じた「序章著作権のコンセプション」にはじまり、憲法学として著作権理論に注目すべき理由を述べた「第1章著作権をみる憲法学の視点」、本研究の先行研究が豊富にある合衆国における著作権と憲法理論の関係を論じた「第2章著作権の憲法上の地位」、著作権の保護を表現の自由に対する制約ととらえたうえで、両権益を調整する著作権法上の理論を論じた「第3章アイディア・事実/表現形式二分法」、「第4章フェア・ユースの法理」とつながっていく。また、後半部分では、著作権を憲法上の問題として論じる意義をわが国に紹介する切っ掛けをもたらした著作権保護期間延長法(CTEA)をめぐる憲法訴訟を分析し(「第5章著作権保護期間延長法」)たあと、デジタル著作物に付されたコピー・コントロール装置と表現の自由の関係を「第6章暗号化と表現の自由」で論じ、「終章著作権と表現の自由の間隙」では著作権理論と表現権論の基礎理論をまとめている。著作権と表現の自由に関する法理論を体系的にまとめた書物は管見のかぎりはじめてであると思われるので、今後の同テーマをめぐる研究についての導きの糸を提供できたと思われる。 また、著作権と同じく知的財産権の一種である特許権が、著作権と同じように表現の自由の制約にあたる場合があることを検討した論説を公表した。著作権同様、無体財産と表現の自由論の関係を分析するための道標を立てることができたものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終年を前に、基礎理論の整理をし、単著として公表できたので。
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Strategy for Future Research Activity |
基礎理論は整理できたので、あとはテーマの核心について分析するだけである。それは、著作権を国家による言論助成と考えた場合、当該国家行為の憲法適合性を分析する法理論を確立することである。 国家による言論助成については、いわゆる「政府言論」の問題について、わが国でも多くの論者による先行研究がある。著作権が言論助成的側面をもつならば、それらの分析を通して、その憲法適合性をどう判定すべきなのかについて明らかにできると思われる。
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Research Products
(3 results)