2011 Fiscal Year Annual Research Report
「多様な家族」の法的保護を可能とする家族形成権と生命に対する権利の日仏比較研究
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22530039
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
建石 真公子 法政大学, 法学部, 教授 (20308795)
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Keywords | ヨーロッパ人権裁判所 / フランス憲法院 / 家族生活を尊重される権利 / 中絶 / 生植補助医療 / 人格の尊重 / 家族の多様性 / 人権条約の国内適用 |
Research Abstract |
23年度は、以下の二つの主題に関して研究した。 1.ヨーロッパレベルの人権規範であるヨーロッパ人権条約が、フランスの国内における人権に対してどのような影響があるのかに関する検討 この検討に関する研究成果として、次の論文がある。 (1)「フランス2008年憲法改正における違憲審査と条約適合性審査-人権保障における憲法とヨーロッパ人権条約の規範の対立の逆説的な強化-(1)」、法学志林109巻3号,1-54頁。 (2)「人権保障における憲法裁判所とヨーロッパ人権裁判所-総論」、比較法研究73号、p.166-171. (3)「人権保障におけるフランス憲法院とヨーロッパ人権裁判所」、比較法研究73号、p.181-192. これらの検討の結果、人権条約に関する監督機関、特に裁判所型の監督機関が存在する場合、最終的な判決は国際人権裁判所となるため、対象となる権利が私生活の尊重のような各国の裁量権限の強い領域であっても、国内の人権規範を変更していく影響力が顕著であることが指摘できる。 2.「生まない権利-人工妊娠中絶」に関する、女性の人権の観点からの検討 (1)「女性の『人格の尊重』と中絶の権利-ヨーロッパにおける憲法裁判所とヨーロッパ人権裁判所判決に関する検討-」、建石真公子ほか編『身体・性・生-個人の尊重とジェンダー』尚学社、近刊。 この検討は、「中絶」の権利を「女性の人格権」の観点から人権論を確立する可能性を、歴史、学説、ジェンダー論、判例等から考察したものである。中絶は、女性の人格権、カップルの権利、子どもの権利、生命の尊重等、多様な権利が錯綜しているが、今まで検討されることの少なかった「女性の人格権」は、ヨーロッパ諸国およびヨーロッパ人権裁判所の判決においては、1970年~80年代から散見することのdできる権利であり、その観点が「身体の自己決定権」の中核の権利であるという
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究には、国際的な人権規範の国内適用、と、個人を尊重することにより多様な家族に関する法的保障を実現する、という二つのテーマを同時に検討することが求められる。 昨年度までの2年間の研究の成果は、この二つの課題に関して研究計画に沿って明らかにしてきており、成果も公刊してきている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度、「生む権利」野関して、特に「生殖補助医療と法制度」に集中して検討を進め、次年度、「養子」の問題を扱い、最終的に、『多様な家族を可能とする法制度』として、研究成果をまとめる予定である。
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