2012 Fiscal Year Annual Research Report
「多様な家族」の法的保護を可能とする家族形成権と生命に対する権利の日仏比較研究
Project/Area Number |
22530039
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
建石 真公子 法政大学, 法学部, 教授 (20308795)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 妊娠中絶 / 家族 / 生命に対する権利 / 人格権 / ヨーロッパ人権裁判所 / フランス |
Research Abstract |
平成24年度は、研究課題である「多様な家族の法的保護を可能とする家族形成権と生命に対する権利に関する国際比較研究」のうち、「生命に対する権利」に関して、ヨーロッパ諸国の憲法裁判所、およびヨーロッパ人権裁判所の各判例を取り上げて検討した。 成果は、編著『身体・性・生ー個人の尊重とジェンダー」というタイトルで出版した。この本の中では、序文にあたる「プロローグ」と「女性の『人格の尊重』と中絶の権利-ヨーロッパにおける『憲法』および『ヨーロッパ人権条約』による保障」を執筆した。本論文では、ヨーロッパにおいて中絶を合法化する過程で、憲法上の生命及び人格権との関係で合憲性が審査された国が多く、それらの憲法裁判所判決について、権理論の観点から、中絶がどのような権利として主張され、どのような権利と対立したのかを検討した。結果として、第1に、憲法が「生命に対する権利」を保護している国々と、憲法に「生命に対する権利」が規定していない国との間で、審査内容に違いがみられること、第2に、しかし、「生命に対する権利」保護の有無にかかわらず、女性の「人格権」保護を根拠として、中絶を認める国々が増加していること、第3に、女性の「自由」、「自己決定権」を理由とする中絶の権利性を容認する国は、当初の予想とは異なり少ないことが明らかにされた。また、ヨーロッパ人権裁判所の判例では、胎児の「生命に対する権利」が認められるか否かについては判断が保留され、直接に中絶法の条約適合性について判断を避けているが、他方、中絶法が制定されている国では、女性が中絶にアクセス可能か否かという観点から、女性が中絶を実施できない場合に、条約違反判決が出されていることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、多様な家族の法的保護を可能とするための種々の権利について、その権利保護の可能性を拡大しうるかを検討するものである。平成24年度までに、予定通り、生命に対する権利と中絶に関する検討が終了した。最終年度である平成25年度は、生殖補助医療と多様な家族の関係を明らかにすることが課題である。その点で、研究課題の達成度は、おおむね順調である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、最終年度であり、研究を完成させ、研究の結論を出す予定である。具体的には、生殖補助医療と多様な家族の関係について、基本となる生殖補助医療と人権に関する検討ののち、現在法制化が国会で審議中のフランスに関して、同性婚と生殖補助医療について検討することを予定している。その後、多様な家族の法的保護を可能とする家族形成権と生命に対する権利について、全体的なまとめとして論文を執筆する予定である。
|