2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530040
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
江島 晶子 明治大学, 法務研究科, 教授 (40248985)
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Keywords | 多層的人権保障メカニズム / 人権法 / ヨーロッパ人権条約 / 裁判所 / 議会 / 政権交代 / ヨーロッパ人権裁判所 / 権利章典 |
Research Abstract |
本研究の目的は、憲法の人権保障メカニズム(統治機構)と国際人権条約の人権保障メカニズム(各種国際人権機関)との多層的接合状況について比較法的実証的研究を行い、接合状況の違い(多層性の有無)が人権保障の実効性にどのように影響するのかを究明することである。本年度は、比較法的実証研究を進めていく上で鍵となる、多層的人権保障メカニズムに関する一般モデル(暫定版)の構築を試みた。その方法として、イギリスとヨーロッパ人権条約を素材として用いて、(1)イギリスの国内判決とヨーロッパ人権裁判所判決の体系的検討および(2)イギリスにおいて多層的人権保障メカニズムが萌芽した要因の究明を行った。具体的には、上記テーマに関する文献・資料の収集および分析とイギリスの関係機関(人権合同委員会、スコットランド人権委員会、国家議員、弁護士、研究者)を訪問し意見交換を行った。その結果、(1)については、ヨーロッパ人権裁判所判例がイギリス国内の裁判所において重要な役割を担っている一方で、裁判所外(政治部門)においては新たな課題が生じていることがわかった((1)ヨーロッパ人権条約とは別にイギリス独自の権利章典を制定するという政府の提案、(2)人権実施を担うことが期待された平等人権委員会に対する批判等)。(2)については、直接の要因はヨーロッパ人権条約(なかでもヨーロッパ人権裁判所が年月をかけて高い実効性を確立したこと)であるが、他方で、国内における政治的モーメント(とりわけ1997年の政権交代)も重要である。逆に、2010年の政権交代後、それとは逆の展開が起きており、イギリスとヨーロッパという多層性が、それに対してどのような役割を果たすかについて、次年度に究明していく予定である。
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