2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22530040
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
江島 晶子 明治大学, 法務研究科, 教授 (40248985)
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Keywords | 多層的人権保障メカニズム / ヨーロッパ人権条約 / 比較憲法学 / 最高裁判所 / ヨーロッパ人権裁判所 / 補完性 / 評価の余地 / 国際人権法 |
Research Abstract |
本研究は、国際的にも国内的にも人権保障制度が構築されつつある現状を踏まえ、憲法の人権保障メカニズム(統治機構)と国際人権条約の人権保障メカニズム(各種国際人権機関)との多層的接合状況について比較法的実証的研究を行い、接合状況の違い(多層性の有無)が人権保障の実効性にどのように影響するのかを究明するごとを目的とする。とりわけ、本研究では、両メカニズムの接合が統治機構の諸原理に及ぼす影響に着目し、それを議会と裁判所の「対話」的関係として把握する可能性を視野に入れつつ、従来の権力分立モデルに対して、国際メカニズムとの接合を加えた新たなモデルを構築・検証し、権力分立原理の人権保障的再構成を試みる。 平成23年度は、一般モデルの検証として、前年度の研究成果(イギリスとヨーロッパ人権条約の関係から一般モデル(暫定版)の抽出)を前提として、その検証を比較的実証的研究を通じて行った。具体的には、関連文書を収集しつつ、ヨーロッパ人権裁判所およびオーストリアにおいて現地調査を行った。 その結果として、ヨーロッパ人権裁判所の判例の蓄積を前提として、同裁判所の権威と信頼性が高まることによって、国内裁判所の人権判例および国内立法に強い影響を及ぼすに至っている一方、そうであるがゆえに、行部の事件においては、(1)国内裁判所と国内議会、(2)国内裁判所と国際裁判所(ヨーロッパ人権裁判所)、(3)締約国と国際機関(ヨーロッパ評議会)という3つのレベルで「対話」と「摩擦」が生じていることを観察した(具体的成果については、後掲「研究発表」参照のこと)。 以上の状況から、国際人権条約の国際・国内実施、ひいては人権の実効的実現において、単純なモデル(どちらが優位するが先に決定されていて自ずとと結果が引き出せる)では不十分であり、多層的人権保障メカニズムとして描出することが有効であることを示せる点に研究としての意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の一般モデル(暫定版)の検証を、比較的実証的に計画通り推進させることができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の一般モデル(算定版)の検証を、さらに、比較対象国を拡張することによって継続する予定である。かつ、検証された一般モデルと日本の状況と比較に着手することによって、日本における問題を明らかにする予定である。
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