2010 Fiscal Year Annual Research Report
わが国抵触法体系における絶対的強行法規の機能的・動態的分析
Project/Area Number |
22530044
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
嶋 拓哉 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (80377613)
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Keywords | 絶対的強行法規 / 特別連結 / 抵触法 / 当事者自治原則 / 利息制限法 / 消費者契約・労働契約 |
Research Abstract |
第一に、ドイツの判例・学説を渉猟した結果、絶対的強行法規の要件は、(1)私法的効果を生ぜしめること、(2)(1)の私法的効果の実効性を確保するため行政上の制裁等の公的関与が存在すること、の2点に集約されることが判明した。従来わが国では利息制限法の絶対的強行法規性を巡り議論があったが、こうした2つのメルクマールに関する検証を踏まえ、同法の絶対的強行法規性を肯定する研究成果を公表した。 第二に、ドイツでは、伝統的には、絶対的強行法規を抵触法上の通常連結の例外をなすもの(=特別連結)として位置付け、その適用には抑制的な姿勢を採る見解が主流となっている。特に上記(2)に関して、絶対的強行法規は「公益目的」を有すると考えられているが、その範囲は国家・経済政策上の目的に限定され、社会政策上の目的を含まないとするのがドイツの通説的見解であり、消費者保護規制等の絶対的強行法規性を認めることには否定的であることが判明した。 第三に、国際契約法の領域では、わが国のみならず、海外の動向に見られるように、主観的法選択が広範に妥当するに至っているが、絶対的強行法規は公序則と並び、その有効な制約要因として機能していることが明らかになった。ドイツでは、特に消費者契約・労働契約の領域において、消費者・労働者保護規制を絶対的強行法規として位置付ける有力説が提唱されているが、これは通説的見解とは異なり、「公益目的」概念を拡張し、これら契約類型における主観的法選択を制約すべく、絶対的強行法規の機能強化を図る動きとして捉えることができる。 第四に、絶対的強行法規と公序則の異動について、両者を同一視する見解もあるが、前者は抵触法レベルの問題であるのに対して、後者は実質法レベルの問題であるほか、絶対的強行法規は公序則が保護する法秩序の核心的原則を必ずしも保護するものではないとして、両者の相違を強調する見解の方が説得的であると考える。
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