2011 Fiscal Year Annual Research Report
非国家主体に対する国家の管轄権行使に関する国際法の研究
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22530047
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
水島 朋則 名古屋大学, 法政国際教育協力研究センター, 教授 (60434916)
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Keywords | 国際法 / 非国家主体 / 管轄権 / 主権免除(外国国家免除) / 国連裁判権免除条約 / 対外国民事裁判権法 / 未承認国家 / 国際決済銀行 |
Research Abstract |
本研究は、これまで研究代表者が行ってきた「外国国家に対する国家の管轄権行使に関する国際法」から移行し、それを発展させる形で、「非国家主体に対する国家の管轄権行使に関する国際法」の現代的構造を解明しようとするものである。外国国家を対象とするこれまでの研究で得た知見の非国家主体への応用可能性や、両者の違いに着目しながら分析を行い、現代の国際法が、非国家主体に対する国家の管轄権行使をどのように規制しているのかを明らかにし、そのような国際法の規制の下で、国家は非国家主体に対してどのように管轄権を行使すべきであるのかを提示することが、本研究の目的である。 研究期間の2年目となる平成23年度は、まず、本研究を進める前提として前年度にまとめた外国国家に対する国家の管轄権行使に関する国際法についての総括的研究である英文論文について、掲載予定の英文図書の編者・査読者からのコメントをふまえた改訂を行い、内容を充実させた(平成24年度中に刊行予定)。また、外国国家と非国家主体との中間的存在とも言える未承認国家に対する国家の管轄権行使に関する国際法上の問題を取り上げ、最近の最高裁判所平成23年12月8日判決(北朝鮮著作物事件)に対する批判的考察を含む論文を執筆し、共著図書の一部として発表した。その他、非国家主体の一つと見ることができる国際決済銀行に対する国家の管轄権行使についても研究を進め、これまで存在が知られていなかった歴史的資料も参照することにより、戦後処理との関係で興味深い問題を提起している日本における国際決済銀行の特権免除について論文を書き進めた(平成24年度中に公表予定)。なお、この間に出された国際司法裁判所2012(平成24)年2月3日判決(国家の管轄権免除事件)は、本研究にも大きく関わるものであり、その研究にも着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの2年間において、おおむね当初の計画に沿う形で研究を進め、論文を2件(共著図書の分担執筆を含む)発表し、英語での学会発表を1度行った。また、学会発表に基づく英文図書の一部を含む論文2件が、ほぼ完成状態にあり、平成24年度中の発表を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究に大きく関わる国際司法裁判所の判決(国家の管轄権免除事件)が2012(平成24)年2月3日に出されたことをふまえて、本研究の前提・背景となる「外国国家に対する国家の管轄権行使に関する国際法」研究に立ち戻り、その集大成に向けて作業を進める。それと並行して、平成23年度に研究成果を日本語で発表した未承認国家に対する国家の管轄権行使に関する国際法問題について、2012(平成24)年12月に米国で学会発表(英語)の機会が与えられており、その報告をもふまえた英文論文の執筆に取り組む。また、非国家主体に対する国家の民事管轄権行使に関わる米国法(外国人不法行為法)の適用範囲に関して、米国連邦最高裁判所が口頭弁論を行うことが予定されており、その判決が出され次第、本研究に関わる重要な事例として、その分析を行う。
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