2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530054
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
関 ふ佐子 横浜国立大学, 国際社会科学研究科, 准教授 (30344526)
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Keywords | 社会保障法 / 高齢者法 / アメリカ / 社会法学 |
Research Abstract |
本研究では、「高齢」を根拠に、高齢者を社会的に支援する制度を正当化する法理論を、アメリカの高齢者法(Elder Law)の研究を通じて探っている。 第一に、高齢者法の原理を研究し、アメリカでは退役軍人への保障との関係などから着目された、高齢者の「功績」という我が国では新しい概念を掘り下げて分析し、「高齢」を根拠に高齢者を特別に保障する根拠を明らかにした。こうした高齢者をめぐる研究の成果は、内閣府における検討会での報告書「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会報告書~尊厳ある自立と支え合いを目指して~」に盛り込まれた。これは、今後策定が予定されている、高齢社会対策大綱の土台となる報告書である。 第二に、比較法研究としては、世界各国の医療保障制度を研究する研究者と共同し、世界の医療保障制度をめぐる研究に着手した。その一環として、アメリカの挫折を参考にしつつ創設された台湾の医療保障制度を実態調査し、現地の研究者・実務家と意見交換した。台湾では、アメリカで実現できなかった各種の工夫を盛り込んだ医療保障制度が確立されており、高齢者をめぐる各種の課題を抱えつつ制度改革が模索されているアメリカの医療保障改革の研究に、各種の示唆を得ることができた。 第三に、Institute of Health Law Studies, California Western School of Lawのメンバーとなり、Bryan A.Liang教授等とともに共同研究を行った。その成果の一端は、Annual Reportに、Institute Innovatorの活動として報告された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書には、平成23年度は、高齢者差別と高齢者保護の関係、高齢者虐待、高齢者の住宅保障などについても研究することを記載したが、これについては、具体的な成果は挙げられなかった。ただし、平成24年度に、この分野に詳しいアメリカの実務家を日本に招聘し、シンポジウムなどを開催し共同研究を行うための準備に、平成23年度は着手し、招聘に向けた準備作業を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、本研究の最終年度であり、高齢者法の全体像を解明するために、2つの研究を進める予定である。 第一に、アメリカの高齢者をとりまき各種の課題を抱えつつ改革が模索されている医療保障制度改革について、さらに研究を掘り下げる。 アメリカの高齢者法の醍醐味は、実務家と協同して横断的に高齢者をとりまく法分野が確立された点にある。そのため、本年度は第二に、アメリカから専門家を秋に招き協同研究を行い、高齢者虐待、高齢者のケアの質といった課題をめぐる最新状況を探る予定である。具体的には、カリフォルニアにある非営利組織CANHAR(California Advocates for Nursing Home Reform)の事務局長および弁護士を、他大学の研究者、日本弁護士会、日本において老人ホームなどにおける高齢者ケアの質の向上に取り組むNPO、Uビジョン研究所とともに、日本に招聘する予定である。CANHRは、高齢者関連施設におけるケアの質の向上に取り組む非営利組織であり、CANHRを招聘し、シンポジウムや研究会を行うことにより、実務と研究が融合した高齢者法の真髄を探りたい(なお、本研究は招聘する資金が足りないため、渡航費や滞在費は手弁当で来ていただく予定である)。これにより、本研究の成果を国内外の研究者や実務家に問うていく予定である。
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