2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530062
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
廣瀬 真理子 東海大学, 教養学部, 教授 (50289948)
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Keywords | オランダ / 社会支援法 / 地域福祉改革 / 福祉国家改革 / 現代化 / 分権化 / 個人化 / 支援システム |
Research Abstract |
本研究の目的は、近年オランダで制定された「社会支援法」(Wet Maatschappelijk Ondersteuning : WMO)の地域福祉改革への影響について検討し、わが国の社会福祉改革への示唆となる点を見出すことである。初年度の研究においては、まず、同法の制定目的と背景を辿り、同法がオランダの地域福祉政策に与える影響について、文献研究により多角的な検討を試みた。 なかでも研究の出発点として、社会支援法の導入の前提となったオランダの福祉国家全体の改革の動向に注目した。つまり、EU政策がかかげる「社会的包摂」の枠組みに沿って、オランダの福祉国家改革において「現代化」や「活性化」が改革のキーワードとして強調されたが、それらの「新たな」改革の視点は、具体的に実施された医療保険や所得保障改革においては、もっぱらサービスの供給サイドの効率性を重視し、サービス利用者に対しては「個人化」を進めるような制度への転換を意味するものとなった。このような福祉国家改革の文脈において、社会支援法の導入は、分権化により地方自治体の裁量権を拡大するいっぽうで、社会保障財源の逼迫から、それまで保険給付としてきた家事援助サービスを自治体の一般財源によるサービスへと転換するなどの改正を導き、また、生活ニーズを抱える住民に対する支援の方法として、すべての地域住民を巻き込んだ支援システムを構築することがめざされるようになった。これらの改正動向は、わが国の最近の介護保険法や障害者自立支援法の改正をめぐる議論にも共通することから、比較の視点をまじえた考察により、わが国のこれからの地域福祉改革の参考にすることができよう。
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Research Products
(1 results)