2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22530062
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
廣瀬 真理子 東海大学, 教養学部, 教授 (50289948)
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Keywords | オランダ / 社会支援法 / 地域福祉 / 分権化 / 福祉国家 / 福祉改革 / 高齢化 / 地域格差 |
Research Abstract |
初年度の研究は、オランダで社会支援法が制定された背景と目的について明らかにするために、近年のオランダの福祉国家の改革動向について概観することからはじめた。そしてその改革が、いっぽうで「社会的包摂」をめざしながら、他方で社会保障・社会福祉の給付の効率化を進め、また住民の生活にも自己責任が強調されるような、自由主義的な要素を多く取り入れた改革となっていることを明らかにした。 このような文脈において制定された社会支援法は、地域福祉改革にどのような影響を与えているのか、その実態について知るために、平成23年度には、ライデン市やナイメヘン市などの自治体や、地域の福祉サービス提供者である民間非営利団体などに対してヒアリング調査を行った。そして、自治体の財源問題や自治体間の格差の現状などが明らかにされた。また、大学・研究機関の研究者とは、異なる立場(自治体・サービス提供者・サービス利用者など)からみた地域福祉改革の課題などについて議論を行い、多角的な視点を養うことができた。 さらに、オランダの社会支援法が、それまで社会保険でカバーされてきた一部の介護サービスを一般財源化した点や、家族介護も含めて地域住民を巻き込むような方向で地域福祉改革を意図するようになった点などは、わが国の介護予防政策や地域包括ケアシステムをめぐる議論と重なる部分もあり、比較の視点をまじえてオランダの事例を検討することは、わが国の今後の地域福祉改革の動向について検討する上でも意義があるといえよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画において、1年目の文献調査、2年目の現地調査を予定どおり行うことができ、とくに現地調査においては研究者からの細やかなアドバイスや協力を得ることができた。その成果についても、論文にまとめてじょじょに発表しているほか、今後も研究会や学会などにおいて報告する予定となっている。ただ、現地調査の日程が十分にとれず、地域の事例をそれほど多く集められなかったことがあり、この点を今後の研究計画のなかに継続して位置づけていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
年間の研究計画については、ほぼ当初の目標を達成できそうであるが、オランダにおいても近年、社会保障・社会福祉法の改正がめまぐるしく行われている。たとえば2013年には、今回の研究テーマである社会支援法にも関連した、障害者雇用と最低生活保障を統合した新法(WWNV)が施行される予定となっている。同法により、基礎自治体を中心とした社会福祉行政もさらに変化していくことが予想される。地域福祉をめぐる法改正の動向をより広い枠組みでとらえて、今回のテーマである社会支援法の分析とともに新法の目的や意義についても考察することが、日本の社会福祉法や地域包括ケアシステムとの比較研究に役立つものと考え、その視点から本研究を継続していく予定である。
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Research Products
(1 results)