2012 Fiscal Year Annual Research Report
高齢社会の下での相続法の総合的検討―特に、ドイツ法との対比で―
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22530072
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤原 正則 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70190105)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 高齢社会 / 国際情報交換 / 国際研究者交換 / 遺留分 / 生前行為 / 死後行為 |
Research Abstract |
今年度の研究実績の概要は、以下の通りである。最終年度に向けての研究の一応の完成という観点から、本研究の主要な課題との関連を考慮して、研究方向を調整した。 1.2009年のドイツの相続法改正に関する改正点の概要につき検討した。その重点は、特に、遺留分制度に関する法改正、および、介護給付との関係でk寄与分を寛容に認定する方向に関してである。ただし、いずれも、法技術的な課題が多いことが判明した。その際に、研究費で招待したシーマン教授(テュービンゲン大学)から助言を仰ぐとともに、ドイツの企業承継を目的とする成年養子に関する問題について教示を得た(成年養子に関する講演については、北大法学論集に2013年度公表予定)。 2.高齢社会との関係で、成年後見制度を相続との関係で検討した。具体的には、高齢者、特に、成年被後見人との関係での、租税納付手続に関する問題点である。 3.特に相続の前倒しとの関係で、贈与法に関する検討を行った。さらに、現在進行中の債権法改正との関係で、贈与法、および、終身定期金の制度に関して検討した。 4.以上の1~3までの検討は、本研究の主要な課題である生前行為と死後処分との関係、特に、遺留分と生前行為・死後行為との関係、および、あり得る予防法学と遺留分の関係についての検討の一環をなしている。特に、予防法学との関係では、ドイツで広く普及している先取りした相続との関係が重要であり、先取りした相続の検討に重点を置いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に予定した、生前行為と死後行為の区別、先取りした相続の検討、特に、2009年のドイツの相続法改正との関係での遺留分制度の検討に関しては、順調に進んでいると考える。しかし、以上を特に、我が国の法制度との対比で、しかも、ドイツとは異なった法制度を持つ我が国で補助的機能を営む法制度との関係では、必ずしも研究が順調に進展しているとうはいえないと考える。今年度は、後者の点にも留意して研究を進めたい。その際に、特に、ドイツ法の先取りした相続と日本法での信託制度の利用、あるいは、後継ぎ相続との関連に留意したい。現在の見通しとしては、法律技術的な側面よりも、高齢化社会を前提とした共通のニーズと伝統的な相続法に関する原則との衝突に問題点を多く発見できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の主な進め方は、従来と変わらない。つまり、特に、ドイツ法、その中でも、2009年の相続法改正で議論された問題点、改正点との関係での、我が国での問題の検討である。ただし、最終年度に向けて、以上の課題に関して補助的な機能を果たすであろう法制度(たとえば、事務管理)なども十分に視野において研究を進めたい。 具体的には、(1)寄与分に関するドイツの法改正と日本法での判例の寄与分の認定との関係、および、その背景となる介護保険制度のあり方、つまり、現物給付のみならず現金給付を認めるドイツ法と現物給付にとどまる日本法の介護保険制度なり方、(2)同時存在の原則を堅持する日本法とドイツ法の先位・後位相続、ベルリン式遺言の考え方の相違、(3)先取りした相続、および、それを側面支援する法制度、たとえば、物権益権を認めるドイツ法と日本法の違い、(4)遺留分の漸減を認めた改正ドイツ相続法と日本法での遺留分の期間制限、遺留分放棄(契約)に関するドイツの予防法学と日本法での家裁での遺留分放棄、および、中小企業の承継に関する特別法での遺留分に対する措置などを対比して、一定の見通しを得ることとしたいと考える。
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