2012 Fiscal Year Annual Research Report
保険契約における解約返戻金規整の現代化に関する研究
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22530077
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
金岡 京子 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (70377076)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 民事法学 / 保険法学 / 解約返戻金 / 保険料積立金 / 疾病保険 / ドイツ保険契約法 / 保険約款規制 |
Research Abstract |
本年度は、最低解約金の水準に関する比較法的研究として、ドイツ保険契約法、ドイツ保険監督法、商法等に規定された疾病保険の保険料積立金の水準に関する研究を行った。 本研究においては、特に日本の立法において難題とされた解約率を織り込んだ、解約返戻金を予定していない保険料積立金に関する数理規制を明らかにすることができた。 また、本研究では、疾病保険のように、現代社会における保障ニーズが高く、しかも医学、医療技術等の進歩、および社会保険制度の変化に伴い、その給付内容の見直しが必要とされる保険分野においては、長期間継続した契約を解約することによって保険料積立金を失う不利益を回避し、新しい給付内容を合理的な保険料で得ることができる契約上の権利保障が重要な意味をもつため、保険料積立金を同一保険会社内の別の疾病保険の保険料積立金に移行できる制度を構築が求められていることを明らかにした。 さらに本研究は、費用保障型の疾病保険において、自賠責のような社会保障的要素も取り込んだ補償システムの構想へとつなげることができた。 本年度は、ドイツの最高裁にあたる連邦通常裁判所において、チルメル式の保険料積立を内容とする生命保険約款が、透明性原則に反するだけでなく、内容それ自体が、不当条項であるという判決が下されたことから、特にドイツにおける解約返戻金にかかわる一連の連邦通常裁判所判決を分析し、来年度の研究につながる準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、前年度の研究成果を踏まえ、疾病保険の保険料積立金計算に関する比較法的検討を通して、最低解約返戻金の水準を研究することにより、商品特性に応じた解約返戻金保障を可能にする規整の具体的構築に向けて、大きな前進ができた。 ドイツ保険契約法169条3項の最低解約返戻金の水準に関する研究は、本年度に新しい連邦通常裁判所判決が下されたことから、その裁判例の分析に着手することを優先したが、保険契約募集時の費用を契約後の早い時期にまとめて保険料積立金から控除することが不当であるという判決の分析は、本年度の研究課題である、保険数理を視野に入れたEUの最低解約返戻金水準の研究を進めるうえでは、重要な前提となった。 したがって、本研究課題の達成度は、おおむね順調であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
ドイツの最高裁判所にあたる連邦通常裁判所において、その内容が不当であるとして無効とされた生命保険および年金保険の解約返戻金の計算に関する条項、解約返戻金の計算の情報開示に関する条項、解約控除に関する条項について、日本の民法の債権法改正中間試案で公表された約款規制との関連を踏まえ、引き続き研究を進め、学会で発表し、その成果を学術誌で公表する。 本研究におけるドイツとの比較法的研究を推進するために、ドイツの保険法研究者、約款規制研究者、憲法研究者との研究討論および共同研究を継続する。 ドイツの共同研究者から受けた、上記判決に関する評釈等、注目すべき見解および保険実務への影響に関する見解について、出来る限り早く、論文の形で日本に紹介し、日本における保険制度の発展的改革に寄与したいと考える。
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