2013 Fiscal Year Annual Research Report
保険契約における解約返戻金規整の現代化に関する研究
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22530077
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
金岡 京子 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (70377076)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 民事法学 / 保険法学 / 約款の内容規制 / 解約返戻金 / 国際情報交換 / 債権法改正 |
Research Abstract |
本年度は、2012年7月25日のドイツ連邦通常裁判所の生命保険約款の解約返戻金約款無効判決後のドイツの約款改定、解約返戻金に関する情報提供内容の見直しについて、比較法的に検討し、保険法の観点からみた民法債権法改正中間試案における約款の内容規制、約款の変更の意義を研究した。 本研究においては、民法により、解約返戻金に関する保険約款の内容規制の実効性と法的安定性を高めるためには、不当条項判断基準の明確化、契約締結時の個別事情の考慮を消費者契約に限定すること等が必要であることを明らかにした。また本研究においては、民法により解約返戻金に関する保険約款規制を行うためには、約款が無効となった場合に必要となる新しい約款の補充方法について、中間試案で示された約款の変更に関する規定の検証を行い、保険契約者保護の観点から、ドイツ民法306条2項およびドイツ保険契約法164条のような、契約目的の維持と相手方の利益を適切に考慮すること等の要件を加えるべきであることを明らかにした。 さらに本研究においては、上記ドイツ連邦通常裁判所2012年7月25日判決および2013年9月11日判決における解約返戻金約款の不当性判断基準、不当性が及ぶ約款の範囲、無効とされた解約返戻金計算に関する条項の補充のための解釈基準について研究し、次年度の解約返戻金の統合的規整に関する研究の準備につなげることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、前年度の研究成果を踏まえ、解約返戻金約款に関するドイツ連邦通常裁判所判決の検討を通して、最低解約返戻金の水準に関する具体的基準および解約返戻金計算と解約控除に関する情報開示の在り方を研究することにより、契約締結費用の開示、解約控除額の制限に関する基本的な規整モデルの提示に向けて、大きな前進ができた。 また民法債権法改正とドイツの保険約款規制との比較法的研究は、本年度に最低解約返戻金の水準に関する補充的契約解釈について、重要な連邦通常裁判所判決が下されたことから、民法債権法の中間試案で検討されていなかった、無効とされた保険約款の欠缺補充の重要性について、保険業法との関連を踏まえた具体的な提言を示すことができ、本年度の研究課題である、解約返戻金の統合規整の第一段階に進むことができた。 したがって、本研究課題の達成度は、おおむね順調であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
法制審議会民法(債権関係)部会要綱案たたき台で示された、約款の内容規制、約款の変更、契約解釈、契約締結時の情報提供に関する規律案、意見、および要綱案に関する学説等を検証し、民法改正による解約返戻金規整の現代化を研究するとともに、保険業法等の監督法、契約法である保険法と民法との協同により、解約返戻金に関する情報開示および最低水準の保障等に関する統合的規整に実効性を高めるための改正案を比較法的に検討し、その成果を学術誌で公表する。 本研究におけるドイツおよびEUとの比較法的研究を推進するために、ドイツの保険法研究者、約款規制研究者、憲法研究者との研究討論および共同研究を継続し、その成果について、共同研究者とともに研究講演会等で発表する。
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