2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530078
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
福井 修 富山大学, 経済学部, 教授 (00512691)
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Keywords | 金融商品 / 損失負担 / 事務処理の委託 / 信託 / 履行補助者 / 自己執行義務 / 職務分担 |
Research Abstract |
本研究の目的は、金融商品において複数の事業者が協同して役務提供する場合に、損害が発生したときの各当事者の損失負担について、諸類型をいくつかの要素を元に分析しつつ、類型に応じたあるべき責任体系を考察することである。23年度の検討状況は、以下のとおりである。 第一に実例の調査分析である。当初射程にいれていたのは、証券投資信託およびカストディ業務であったが、これにマスタートラスト、不動産流動化、ファンドオブファンズを追加した。追加した三類型のうち、マスタートラストおよび不動産流動化について、実例を調査し、法的関係を分析した。しかし、ファンドオブファンズについては充分な資料を集められなかった。 第二にカストディ業務に係る詳細分析・調査である。9月に海外カストディ業務についての実態把握のため、フランスおよびルクセンブルグに赴いた。ルクセンブルグでは日系信託銀行の現地法人、世界的にカストディ業務を展開しているグローバルカストディ企業、および欧州の有力証券決済機関を訪問し、業務のフロー、問題状況についてヒアリングし、意見交換を行った。 第三に理論面の調査研究である。信託法における責任分担の議論、事務の委託と複数受託者の効果の相違、手段債務と結果債務の分別の実益、有償委任と無償委任の区別の実益等について調査した。また、本研究の一環として、証券投資信託で発生した損失負担について、委託会社と受託者の間で争われた訴訟(東京地判平成21・6・29金判1324・18)を題材に、事業者間で役割分担がある場合の責任負担の原則的な考え方を法務雑誌(銀行法務21第738号)に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実例については、ファンドオブファンズの調査が遅れている。全体としても、諸要素(事業者間の支配関係、購入者の関与など)の整理が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
実例調査で遅れている部分をリカバーする。また、最近AIJ投資顧問の運用失敗が大きく報道され、これを機にスキーム全体の責任負担の議論も出ているようである。この事件についても実情・問題点を調査したい。種々の実例をベースにマトリクスを作成し、そこから損失負担を導き出す諸要素のうち、何を抽出し、何を捨象するかを分析したい。24年度は最後の1年になるので、今までの調査・研究をベースにして一つの試論をまとめて、発表したい。
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