2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530081
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山本 顯治 神戸大学, 法学研究科, 教授 (50222378)
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Keywords | 契約の経済学 / 不完備契約論 / 情報の経済学 / 契約責任 / 救済法 / 再交渉 |
Research Abstract |
(1)本年度は、近時諸外国において飛躍的発展を見た契約の経済学の知見をもとに、関係的契約理論にもとづく損害賠償論の構築を試みた。関係的契約理論に関しては、契約の経済学の内、不完備契約論による解釈が試みられ理論的に大きな展開を見ている。この成果は、下記記載の『法の理論29』に論稿の形で発表された。そこでは、契約締結後判明した事情ないし、締結後変化した事情のもとので、効率性の見地から当初契約を履行させることの可否(履行の効率性)と、他方では、履行価値を高めるために不確実な事情が確定するまでになされる信頼投資の効率性を、不完備契約論の立場から検討した。 (2)第2に、英米を中心として80年代後半から展開を見た契約の経済学の概観を試み、そこでは、情報の非対称性論、不完備契約論、取引費用経済学の三つの潮流が主たる役割を果たしていることを明らかにした。特に不完備契約論と情報の非対称性論の知見を用いつつ、効率性に着眼した契約責任論の可能性を検討し、「損害賠償」「強制履行」「再交渉」という三つの救済法理につき検討を行った。さらに、「損害賠償額の予定」を検討し、情報の非対称性論と不完備契約論の知見に基づきながら「市場」という観点を取り入れ、損害賠償額の予定はこれから契約関係に参加しようとする潜在的当事者にとり参入障壁として働き、社会的厚生を阻害しうることを示した。この成果は、下記記載のNBL掲載の論稿に公表した。
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