2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530081
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山本 顯治 神戸大学, 法学研究科, 教授 (50222378)
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Keywords | 行動経済学 / 投資取引 / 勧誘規制 / 助言義務 / プロスペクト理論 / 行動主義的法と経済学 |
Research Abstract |
1.具体的内容 平成23年度は、行動経済学の知見を踏まえた投資勧誘法理の規制に関する基本的理論モデルの構築を試みた。特に、近時の欧米においては、ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーにより展開されたいわゆるプロスペクト理論を踏まえた行動ファイナンス論が大きな展開を見ているが、かかる領域における知見は我が国の民法理論における投資勧誘法理に対して大きな示唆を与えることを論じた。なかでも、利得領域においては投資家はリスク・アバースであるが、損失領域においてはリスク・テイカーとなるという投資家心理の実証的知見からは、損失を被った状況における投資家に対する勧誘規制について相応の考慮が必要であるとの帰結が導かれる。かかる成果は、「先物取引被害研究」37号掲載の論文において公表された。 2.意義 本年度の研究においては、損失状況における投資家の心理を踏まえた投資勧誘規制法理構築の必要性が明示されたのみならず、実際に投資被害の現場に携わっている法曹実務家との交流において、この知見の現実的有効性が確認されたこともまた大きな成果である。本研究の実務的意義については、「先物取引被害研究」37号掲載の、法曹実務家との討論の形で公表されている。 3.重要性 本研究の重要性は、より発展的な投資市場の育成のためにも、投資家心理を踏まえた法理論を提供することが民法学において現在喫緊の課題となっていることを明らかにし、かかる理論の一例を具体的に提示したことにある。本研究で示した成果は、現在のところ欧米諸国においても見られず、その意味で、広く欧米を含めても、オリジナルな研究であると言いうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、平成22年度の研究を踏まえ、不完備契約論、情報の経済学を踏まえた契約責任論の基本的理論モデルの構築を行った。この研究はこれまで順調に進展している。さらに、不確実性下における行動経済学的知見を踏まえた理論モデルの構築にも携わり、明白な成果を見た。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの順調な進捗状況に鑑みると、今後の推進方策については、特段の変更の必要性は存しないものと評価しうる。平成24年度においては、平成23年度までに構築した理論モデルを元に、研究成果を公表する予定である。同時に、本研究は、現在同時進行形で世界レベルでなされており、陸続と現れる外国文献についても、継続的に先端的理論状況を分析・検討する予定である。
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