2010 Fiscal Year Annual Research Report
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22530084
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松原 弘信 熊本大学, 大学院・法曹養成研究科, 教授 (20190499)
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Keywords | 当事者総論と当事者各論の有機的連関 / 当事者権の解釈論的道具概念化 / 当事者権の主体的範囲 / 行為規範と評価規範の原則的一致と例外的乖離 / 抽象的手続保障 / 具体的手続保障 / 形式的当事者概念 / 実質的当事者概念 |
Research Abstract |
交付申請書に記載した研究実施計画にほぼ従い、「当事者論における当事者権の研究序説」と題する論文の執筆に向けて、2010年10月に熊本大学法文棟研究会室第一において開催された民事手続研究科会(九州)において報告し、それを踏まえて熊本法学122号においてその成果を公表した。 その研究成果の中身は、研究計画書に記した筆者の問題意識の全体像を明らかにした。具体的には、当事者論を中心とした当事者権をめぐるわが国の学説史的展開を考察し当事者論における当事者権と当事者概念との結びつきについての学説を検討して本テーマについての学説の到達点を明らかにし、本研究課題についてのトータルな問題の所在(形式的当事者概念を前提としてそれに該当する当事者に抽象的手続保障としての当事者権を保障する通説によるかぎり当事者論における当事者権は解釈論的意義を持ち得ないこと)を明らかにしたうえで、当事者権が「当事者各論」との関わりにおける解釈論上の意義を、第一に、当事者確定論・既判力の主観的範囲論との関わり、第二に、当事者適格論・多数当事者訴訟論との関わりにおいてそれぞれ考察して雑駁な試論を明らかにするとともに、かかる解釈論上の意義をもつ新たな展開可能性のための理論枠組みを明らかにした。 本研究の意義として、(1)当事者論における当事者権の解釈論上の意義が従来の学説において認められない理由を学説史的考察により明らかにした、(2)当事者論において当事者権を解釈論上の道具概念としての意義を当事者各論との有機的連関において私見を明らかにした、(3)上記私見を基礎づける理論的枠組みを提示した、(4)今後の個別研究による本テーマ深化の足がかりを得た点が挙げられる。
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