2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22530084
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松原 弘信 熊本大学, 大学院・法曹養成研究科, 教授 (20190499)
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Keywords | 当事者権 / 実質的当事者【概念】 / 会社の組織に関する訴え / 被告適格 / 共同訴訟的補助参加 / 共同訴訟的補助参加人の手続保障上の地位 / 会社被告説 / 共同被告説 |
Research Abstract |
後述する寄稿依頼を受けたことから交付申請書に記載した当初の研究実施計画とは異なったが、前年度の公表した「当事者論における当事者権の研究序説」と題する論文(以下、前稿と略する)の公表を受けて、法律時報という伝統ある有名な法律雑誌(日本評論社発行)の編集部から法律時報2012年4月号の「特集会社事件手続法」の一翼を担う論文「会社の組織に関する訴えの被告適格-手続法からの分析」の寄稿依頼を受けて、2011年12月に九州大学研究会室において開催された民事手続研究会(九州)において報告し、それを踏まえて2012年2月に論文を脱稿し校正を経て同年3月末に公刊された。 その研究の中身は、先般の会社法の制定において会社の組織に関する訴えの被告適格について法定され、商法学者は一般に、民訴法学者において有力な見解として、これにより会社被告説で立法的な決着が図られたと解されているが、そうとはいえず現在なお会社被告説と共同被告説の見解の対立は解釈論上の論点として意義を有することを明らかにしたうえで、取締役選任を決議とする株主総会決議取消訴訟において会社のみを被告として訴えた場合の被選任取締役の共同訴訟的補助参加の手続保障上の地位について当事者権の観点から「実質的当事者」として行為規範の観点から形式的当事者に同視しうる訴訟主体的地位を有することを明らかにし、そのうえで、前稿を踏まえて論じ従来の判例・伝統的通説たる法人被告説の意義と問題点、およびそれと対立する見解の有力説たる共同被告説の意義と問題点を明らかにしたうえで、法人のみを被告適格者としつつ被選任取締役も共同訴訟的補助参加人でありながら実質的当事者として訴訟主体的地位を認めるという両説の「折衷的見解」を独自の見解として提唱したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有名な法律雑誌から寄稿依頼を受けてことから当初の交付申請書に記載した研究実施計画とは異なったものの寄稿依頼を受けて書いた論文においてその前の年度の公表した「当事者論における当事者権の研究序説」において提示した私見について具体的な問題に即して突っ込んで論じることができたことで一定の研究成果を挙げることができたと思っている。今後そこで明らかになった課題(共同訴訟的補助参加人の手続保障上の地位と当事者権との関わり)を今年度の研究実施計画につなげることができたという面でもおおむね順調に進展しているといっていいのではないかと思っている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究の成果を踏まえつつそこで明らかになった研究課題である、会社訴訟および人事訴訟を考察の対象とした共同訴訟的補助参加における参加人の手続保障上の地位について当事者権との関わりにおいて日本とドイツの比較法的考察およびわが国の学説史的研究(ドイツの学説の学説継受を含む)を推進したいと考えている。この問題は「当事者各論との有機的連関における当事者総論の研究」という基本的問題意識の具体化で、その限りでは研究計画の変更を意味しないが、大きな研究課題である関係上、今年度中に他の研究課題まで行うことが時間的に困難になっており、それについては次年度以降の研究課題に委ねざるを得ないと考えている。
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