2011 Fiscal Year Annual Research Report
当事者引込み制度の基礎的研究-各国強制参加制度の展開と日本法への示唆
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22530087
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
佐野 裕志 専修大学, 法務研究科, 教授 (10145451)
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Keywords | 訴訟参加 / 呼出し / 強制参加 / 担保訴訟 / 訴訟告知 / 補助参加 / 引き込み / 参加的効力 |
Research Abstract |
4年計画の研究の2年目であり、計画通りドイツ法での展開を中心に資料を収集し、その分析を行うとともに、オーストリア法やフランス法についても資料を収集し、検討を行った。 1.中心として検討したのは、22年度から引き続き、職権での呼出し制度(Adcitation)についてであるが、もともとはローマ法の追奪担保制度が起源となる。追奪を受けた買主が売主に対して、売買代金の2倍額あるいは3倍額の賠償を求めていく場合、第三者からの追奪訴訟において売主に対して買主が訴訟を告知することが要件となっていた。この告知を受けた売主は、追奪訴訟において買主と協力して防御活動を行う義務があり、買主が追奪された場合は、この義務に違反したとして賠償責任を追うという構造であった。この防御義務を基礎とした売主の買主への責任をもとに、その後、追奪訴訟において買主が売主を訴訟に引き込むという制度が生まれてきたものと考えられる。 とりわけフランス法でみられた担保訴訟は、まさにこのローマ法上の追奪担保制度を基礎に置くものであり、追奪訴訟において買主が売主への担保請求訴訟を併せて提起するところまで展開していった。このフランス法での展開は、ラインラントの地ではフランス法が施行されていたこともあり、その後のドイツ法へ大きな影響を与え続けた。 2.この一方、日本法へ大きな影響を与えたドイツ法では、この売主の防御義務に基づく追奪担保制度を採用しなかった。もともとローマ法においても、当初の防御義務に基づく責任という構造から、その後、売買契約上の義務として、第三者から追奪を受けたということだけで売主の責任を認めることを基礎とする制度へと展開していった。ドイツ普通法時代にも、この追奪という事実を基礎とする売主の責任という体系が維持され、そのままドイツ民法へ、そして日本法へ引き継がれていった。すると、訴訟手続においても、追奪訴訟において買主が売主を訴訟に引き込む必要は必ずしもなくなり、フランス法のような担保訴訟制度が展開することはなかった。 3.このようにライン川を挟んだ隣国であるドイツとフランスは異なった形で追奪担保制度を展開していったことが明らかとなったので、23年度は、ドイツ民事訴訟法制定時での、ドイツ法へのフランス法の影響に注目して検討を行ってきた。 ただ、対象となる制度が古い時代のものであり、資料面の制約もありまだ検討は必ずしも十分とは言えないので、24年度以降、引き続き、この点の解明を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「9.研究実績の概要」に記載したとおり、古い時代の制度を検討することもあり、若干、資料面での制約があって検討が必ずしも十分とは言えない面もあるが、これは当初から予想していたことでもあり、この点を除けば、当初立てた計画に沿って、ほぼ順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
「9.研究実績の概要」の末尾に記載したように、ドイツ民事訴訟法制定過程での、ドイツ固有法に対するフランス法の影響を検討し、両者のせめぎ合いの中で、担保訴訟、そして訴訟告知と呼出しはどのように検討されていったのかを解明することが24年度の研究の中心となる。 このために、23年度から引き続き、ドイツ民事訴訟法制定時代を中心とした時代の資料収集と分析を行うとともに、得られた成果について、中間的な報告を研究会などで行うことを計画している。
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