2010 Fiscal Year Annual Research Report
日仏における債権法改正と瑕疵担保責任の比較法的検討
Project/Area Number |
22530091
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
野澤 正充 立教大学, 法務研究科, 教授 (80237841)
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Keywords | フランス法 / 瑕疵担保責任 / 法定責任説 / 債務不履行責任説 / ウィーン売買条約 / 債権法改正 / 民法改正 |
Research Abstract |
本年度は、立教法学に連載している「瑕疵担保責任の比較法的考察」の論文の(5)を執筆した。この論文では、1970年代から80年代初頭にかけてのわが国における学説を概観し、瑕疵担保責任の法的性質に関して債務不履行責任説が「学界の大勢」であると評されたにもかかわらず、実際には法定責任説がなお多数であり、かつ、有力であったことを明らかにした。しかし、比較法的には、法定責任説を維持する国は存在せず、法定責任説は社会的基盤を失っていたと考えられる。そして、このことを決定づけたのは、1980年におけるウィーン売買条約(国際物品売買契約に関する国際連合条約)の制定である。すなわち、同条約は、瑕疵担保責任を債務不履行責任へと一元化した点では1964年の国際動産売買統一法と同様であるが、アメリカ合衆国を含む英米法系の国々もこれを批准することにより、より実効性を有するものとなった。そして、このウィーン売買条約の制定を契機に、ヨーロッパにおいても債務不履行責任説が展開する。ところで、わが国において現在進められている民法(債権法)の改正は債務不履行責任説に依拠するものと解されているが、厳密にはそうではない。債権法改正の基本方針は、瑕疵のある物を給付された買主の救済手段として、(1)完全履行請求、(2)代金減額請求、(3)契約の解除、(4)損害賠償請求を認めつつ、売主に免責事由がある場合にも、(4)は認められないが、(2)は認められるとする。この点において、基本方針は、売主の免責を認めない代金減額請求権を維持して、伝統的な瑕疵担保責任と債務不履行責任との融合を図るものである。そして、このような考え方は、フランス民法典とも適合する。というのも、基本方針の依拠する国際商事ルールは、英米法とフランス法をも含む大陸法とを参照して作成されたものだからである。
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Research Products
(4 results)