2011 Fiscal Year Annual Research Report
日仏における債権法改正と瑕疵担保責任の比較法的検討
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22530091
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
野澤 正充 立教大学, 法務研究科, 教授 (80237841)
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Keywords | 瑕疵担保責任 / フランス法 / 債権法改正 / 債務不履行 / 民法 / 保証 / 債権法 / 不法行為 |
Research Abstract |
本研究は、瑕疵担保責任と債務不履行責任の関係につき、今年度においては、以下の知見を得た。 本研究は、瑕疵担保責任の本質が給付危険の負担の問題であると解した。そして、そのことは、売買契約が双務契約であることから基礎づけられる。それゆえ、瑕疵担保責任も契約責任の1つである。しかし、瑕疵担保責任が契約責任であることは、直ちに債務不履行責任であることを意味しない。法定の無過失責任である瑕疵担保責任は、債務不履行責任と、次の点において区別される。すなわち、要件の点では、瑕疵担保責任が債務不履行責任であるとすれば、個々の契約において、問題となった当該性質が契約内容となっていることを、個別具体的に探究し、確定しなければならない。換言すれば、給付危険というリスクの分配を定めるのも、当事者の合意によることになる。これに対して、法定責任である瑕疵担保責任は、そのリスクの分配を個々の契約ではなく、法律が定めることになる。その背景には、英米法と大陸法の違いが存在する。すなわち、英米法では、原則として、売主が物の瑕疵についての責任を負わず、「買主をして注意せしめよ」(caveat emptor)の法格言が適用される。そして、その修正原理として、コモン・ロー上の黙示の保証(黙示のワランティ=impliedwarranty)が認められる。それゆえ、瑕疵という給付危険の分配も、個々の契約によって定められるものであり、その結果、瑕疵も債務不履行の一つに位置づけられる。これに対して、大陸法では、「物の所有者が危険を負担する」(Res perit domino)との原則により、物の滅失・損傷については当初から売主がその危険を負う。そして、その危険の買主への移転も法定されるものである。換言すれば、大陸法では、当事者が合意しなくても、法律が瑕疵というリスクの分配をあらかじめ定めるものである。 なお、債権法改正の方向性も、上記の大陸法と英米法とを融合したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、立教法学に連載中の「瑕疵担保責任の比較法的考察(1)~(5)」に関して、その日本法部分(第1部)の完結を目標とした。その目標は達成できなかったものの、下記の「瑕疵担保責任と危険負担」という論考において、実質的には完結することができた。その意味では、おおむね研究が順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題に関しては、日本法の部分を完結するとともに、来年度はフランス法の部分をまとめ始めることとする。また、本研究課題との関連では、次の2つのテーマがさらに進展してきた。1つは、契約法における「瑕疵」のみならず、不法行為の領域における「瑕疵」の概念を検討することであり、もう1つは、担保責任と関連して、保証責任を研究することである。この2つの新しい発展的なテーマに関しては、来年度において、是非検討したいと考えている。
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Research Products
(4 results)