2011 Fiscal Year Annual Research Report
情報化社会における消費者法制についての比較法的研究
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22530095
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
川和 功子 同志社大学, 法学部, 教授 (70295731)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 宏直 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 准教授 (00293077)
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Keywords | 消費者 / 高齢者 / 若者 / 消費者法 / 不公正取引 |
Research Abstract |
現代社会において、消費者のおかれる状況に目を向けると、IT化、国際化、取引形態の多様化、流通商品の多種・多様化が進み、広告、宣伝など商品に関わる情報が商品の価値を形成する重要な要素となっており、契約当事者間では、いわゆる、情報格差が拡大する傾向にある。高齢者、若者など取引的弱者を特にターゲットとした事業者の巧妙な販売手法によるさまざまな取引も行われる 一人の消費者であっても状況によっては「弱い愚かな消費者」、「強く賢い消費者」という二つの消費者像を併せもっており、若者、一人暮らしの高齢者など、十分な理解や判断力をもたないで契約することがある者が存在する。さらに十分に情報提供を受けたとしても、消費者は常に合理的に行動するとは限らない。このように、「生身の人間」としての消費者の特質を踏まえながら、「消費者と事業者の構造的格差に由来する消費者法の必要性」、消費者と事業者との間で行われる取引における「自由かつ公正な市場の確保」、「安全な市場の確保」といった様々な側面から消費者像の検討を含めた消費者の保護について考察する必要性が生じている。 消費者像について「合理的に十分な情報提供を受け、合理的に注意深く慎重な者」である「平均的消費者」に加えて、ある取引方法が特定の消費者集団に向けられている場合における当該集団の平均的構成員、さらに年齢、精神的もしくは肉体的な疾病が理由で被害を受けやすい消費者集団の平均的構成員についての規定を設けたEUにおける「二〇〇五年事業者の消費者に対する不公正な取引方法に関するEC指令」に関連する裁判例および議論、二〇〇五年EC不公正取引方法指令が国内法規化された英国の「二〇〇八年不公正な取引方法からの消費者保護規則」の検討、ならびに英国における最近の法改正の状況における議論などを中心に資料収集を行い、考察を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
消費者法制の背景にある消費者政策の基本的ポリシーにまで踏み込んで、消費者法制の実効的なありかたについて検討するという観点から、まず、消費者概念について考察するにあたり、消費者基本法や消費者契約法、特定商取引に関する法律と割賦販売法の改正、2005年EC不公正取引方法指令、2008年英国不公正取引方法規則指令などを概観することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
さまざまな側面からの研究が考えられるが、去年度は消費者の人的特性に注目した研究をおこなったので、今後は契約締結過程に関わる問題、契約条項に関わる問題ついて法令、判例、ガイドラインなど幅広く検討していきたい。
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