2010 Fiscal Year Annual Research Report
事業再生におけるキャッシュフロー・ファイナンスの役割の検討
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22530097
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小山 泰史 立命館大学, 法学部, 教授 (00278756)
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Keywords | ABL / 流動財産担保 / 流動動産譲渡担 / 流動債権譲渡 / 物上代位 / 固定化 / 通常の営業の範 / 集合物 |
Research Abstract |
筆者は、後掲の拙稿において、最高裁は、「不動産を目的とする譲渡担保において、債務者が弁済期に債務の弁済をしない場合には、債権者は、譲渡担保契約が帰属清算型であると、処分清算型であるとを問わず、目的物を処分する権能を取得する」との判例上のルール(「弁済期到来時」ルール)を形成してきたことを指摘した。このルールは、不動産以外の譲渡担保等にも妥当するものであって、流動動産譲渡担保の場合には、譲渡担保権者に、弁済期の到来により、譲渡担保を実行して集合物を構成する個別動産の処分権が帰属することになる。換言すれば、弁済期の到来時までは、設定者に「通常の営業の範囲内」で個別の道産を処分することが当然に認められる。設定者のその処分権の帰属の分水嶺を画する時期が「弁済期到来時」であって、これ以降、債務者としての設定者が完全に債務不履行に陥って譲渡担保の実行を受けるか、それとも再度事業再生への道を歩むことができるかが、分かれるのである。事業再生の局面の入り口を検討することによって、この種の担保手段の持つ機能の一端を考察することができたと考える。また、私法学会における報告(ワークショップ)では、後掲の報告テーマにつき特に関心を持つ研究者・実務家が参集され、中身の詰まった議論をすることができた。例えば、流動動産の譲渡担保につき、弁済期の到来時の先後で、担保権の性質が変わるという理解をする必要があるのか、むしろ、一般先取特権のように債務者の一定の財産に優先権が与えられているとの理解で足りるのではないか、との質問や、固定化によって流動動産の譲渡担保が個別動産の譲渡担保に性質を変じる等、この概念によってかえって議論が硬直化しており、担保権者から設定者への処分授権等、個別の議論を組み合わせることによってこの種の担保の性質をより明確にすべき、との指摘がなされた。報告者からは、以上の性質に留意してもなお、報告者の現在の立場の修正までは不要であるとの反論がなされた。
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Research Products
(2 results)