2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530100
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
村山 淳子 西南学院大学, 法学部, 准教授 (90350420)
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Keywords | 医療契約 / 典型契約 / 診療契約 / 本質的要素 / 本性的要素 / ドイツ / 医療法制 / 医療と法 |
Research Abstract |
本研究は、「現代の日本において、通常の能力を備えた私人が、緊急事態ではなくして医療を受けに行く」という一般形においては、医師と患者の間に何らかの法的な契約関係が成立すると想定し、その内実を実体的に解明して、最終的には一つの独自の典型契約類型を定立しようとするものである。本年度の成果は以下のとおりである。 1 典型医療契約類型の全体的な枠組モデルを組み立てることができた。それは、主に委任を下位に据え、本質的要素(診療義務、診療協力義務等)を中央頂点に、本性的要素(説明義務、守秘義務等)や偶有的要素(説明義務の加重等)がそれを取り巻くピラミッド型であり、周辺に多くの契約外規範(保険法令上の規律等)が存在するというものである。本類型は、従来契約外とされてきた社会規範・内在的規範を大きく取り込むという特質を有する。この点は、医事法学のみならず民法学の契約理論にとっても大きな意味を持つ。 2 本課題の外国法研究として、ドイツの医療法制について検討を行なった(その成果はすでに紀要および学会(一部)で発表した。裏面参照)。そこでは、ドイツ医療法制の全体像を特徴的に描写するなかで、医療と法の関係性を分析し、以下のような結論を得た。すなわち、ドイツにおいて法は医療を、(1)あるべき医療や医師・患者関係を当事者に創造させるための枠組みを提供するために(なにゆえ:規律原理)、(2)医療や医師・患者関係のあり方そのものには立ち入らず、それを決定もしくはルール化する組織や制度について(何を:規律対象・範囲)、そして(3)枠組みを定めたら実質についての決定権限を医師の自治組織に委譲する方法で(どのように:規律方法)規律している。類似した法体系と法理論を有し、医療については自覚的な進歩を遂げてきた「似て非なる国」ドイツにおける、法と医療の具体的な距離関係を確認できたことは、1における社会・内在的規範の取り込み方の考察に大きな役割を果たし得る。
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