2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530100
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
村山 淳子 西南学院大学, 法学部, 准教授 (90350420)
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Keywords | 医療契約 / 典型契約 / 診療契約 / 典型契約類型 / 本質的要素 / 三分法の理論 / 契約の本性 / 公私協働 |
Research Abstract |
本年度の研究成果として、すべての医療契約規範の検討・精査を終え、結論として典型医療契約類型を組み立てて提示することができた。裁判規範はもとより医師の行為規範としても重要な意義をもつ。 1全体モデルは、委任を下層に据え、本質的要素(治療義務)を中央頂点に、本性的要素(説明義務、守秘義務)がそれを取り巻くピラミッド型であり、周辺から多くの契約外在規範(公法上の守秘義務規定、保険法令上の規律等)が取り込まれて協働するというものである。 2性質決定をめぐる思考過程は以下のように流れてゆく。(1)「現代の日本において、通常の能力を備えた私人が、緊急事態ではなくして医療を受けに行く」という基本場面を想定する(本研究の射程)。(2)その場面において、医師と患者が医療契約の本質的要素(治療義務)について合意をしたならば、そこには何らかの契約が成立したのであり、成立したその契約は医療契約というタイプの契約であると性質決定される。(3)この医療契約において、医療契約の本性的要素(説明義務、守秘義務)について合意をしていなければ、その欠缺は信義則を根拠に補充される。上記諸規律の一部もしくは全部を排除する合意をしていたならば、当該規律については排除される。もっとも、医療契約の排除されざる本性的要素(医的侵襲に先立つ説明義務)についてだけは、医師と患者の合意によって排除することができない。(4)医師と患者が、偶有的要素(診療内容についての特約、免責条項等)について合意をしていたならば、それも契約内容に加えられる。ただし、それが本質的要素や排除されざる本性的要素と矛盾するものであるならば、その効力は否定される。(5)(1)(2)が認められず、したがって(3)以下が妥当しないケースでも、非典型な医療契約もしくは別類型の契約として、契約の成立自体は認められる可能性がある。 3関係的・保護法益の人間関係的拡張・社会全体への潜在的配慮が個性である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
最終年度は日本私法学会報告・著書出版・博士論文提出準備にかなりの時間を要することが判明したため、その分研究の速度を増したものである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究が当初の計画以上に進展したことを有効活用し、日本私法学会報告・著書出版・博士論文提出準備を成功させるとともに、外国法研究の補足を中心とした研究内容の一層の充実をはかりたい。
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