2010 Fiscal Year Annual Research Report
現代フランスにおける共和主義・多文化主義・レイシズム―その連関と克服
Project/Area Number |
22530125
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
長谷川 一年 島根大学, 法文学部, 准教授 (00399049)
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Keywords | 共和主義 / 多文化主義 / レイシズム / 政治学 / 思想史 |
Research Abstract |
平成22年度は、現代フランスの「共和主義」について、その理論的代表者と目される社会学者ドミニク・シュナペールの議論を中心に研究を進めた。とくに、彼女の主著である『市民の共同体』『福祉国家民主主義』『市民性とは何か』を中心に検討し、『市民性とは何か』については翻訳・紹介をおこなった(風行社より刊行)。 本研究を通して明らかにされたシュナペールの基本的姿勢は、共和主義の教条派(たとえばレジス・ドゥブレ)と多文化主義の推進派(たとえばミシェル・ヴィヴィオルカ)の中間にあって、共和主義の原理そのものに含まれている「寛容」の理念を極限まで引き出すことにより、移民の統合やEU拡大という時代的要請に応えていこうというものである。 その立場は、国民国家の解体や終焉を唱えるポストモダンの潮流(たとえばエティエンヌ・バリバール)と対立すると同時に、既存の国家を擁護しその歴史と伝統を称揚する守旧派=ナショナリズムとも異なる。フランスの文脈を離れてアングロ・サクソン圏に目を向けるならば、1990年代に登場した「リベラル・ナショナリズム」の発想、とりわけその有力な論者であるオックスフォード大学の政治学者デイヴィッド・ミラーの議論と呼応するところがあるように思われる。
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