2012 Fiscal Year Annual Research Report
現代フランスにおける共和主義・多文化主義・レイシズム―その連関と克服
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22530125
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
長谷川 一年 島根大学, 法文学部, 准教授 (00399049)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 共和主義 / ナショナリズム / 移民 |
Research Abstract |
フランスはアングロ・サクソン型の「多文化主義」とは一線を画するかたちで移民の統合を進めてきた。「共和主義」と呼ばれるその原理は、現在でもフランス・アカデミズムの本流から支持されているが、エティエンヌ・バリバールに代表されるいわゆるポスト・モダン派からは、「普遍性」の名の下に他者への抑圧が正当化されているとの批判がある。本研究は、このような問題を政治思想・政治理論の視角から検討するものであり、本研究期間中、社会科学高等研究院(EHESS)の客員研究員として、共和派の代表的論客と目されるドミニク・シュナペールのセミナーに参加する機会を得た。こうして得られた知見として、さしあたり以下の二点を指摘しておきたい。 第一に、共和主義は決して一枚岩の思想ではなく、むしろそのニュアンスに注目しなければならない。たとえば、レジス・ドゥブレやブランディーヌ・クリージェルのような強硬な共和派に対して、シュナペールは「リベラルな(寛容な)共和主義」を標榜している。その理論的差異は、現実には移民政策の違いとなって表出する。第二に、人口移動による多文化・多民族化は西欧社会に共通する現象であり、共和主義の展開もフランス一国のみならず、より広い観点から理解されるべきである。その意味で、今日の英米圏で議論されている「リベラル・ナショナリズム」の思想潮流は、フランス共和主義と親近性を持つ政治理論であり、両者の接点を探究することが重要であると思われる。 なお、本研究の成果の一部として、拙論「フランス共和主義とリベラル・ナショナリズム」(富沢克編『「リベラル・ナショナリズム」の再検討』ミネルヴァ書房、2012年)を発表した。また、クリスチャン・ジョプキ『ヴェール』(法政大学出版局)が拙訳により近刊予定である。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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